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第2話

 そう。  すべては、俺の気のせいのはず……だった。 「ただいま~」 「お、おかえり!」 (わーい、佐藤くん帰ってきた! すごい、湯気が立ってる) 「外、寒かった?」 「は、はい、すごく……理人さん、起きてたんですね」 「うん。生活リズム戻したいし」 (それに、お腹空いたから) 「シャ、シャワーしたらすぐ朝ご飯にしますね。何か食べたいもの、ありますか……?」 「ん、そうだな……」 (お父さんとお母さんにもらったお餅が食べたい。でも、俺がやると、焼くの失敗しそうだな……) 「あ、あの、餅……焼きましょうか」 「え」 「実家で、もらったやつ……」 「う、うん!」 (やった! 甘い醤油付けて、海苔巻いて食べるやつがいい!) 「い、磯辺焼き……なんて、どう、ですか」 「磯辺焼き?」 (なんだそれ) 「甘い醤油付けて、海苔巻いて食べるやつ……です」 「うん! それがいい……!」 (すごい! 俺たち、以心伝心だな!) 「……」  そんなことが起こるわけがないーーそう言い聞かせる俺を嘲笑うかのように、理人さんの声は頭に響き続けた。  そのうちに、俺はある結論に達したのだ。  聞こえているのは、理人さんの心の声に違いないーーと。  この三日間、いろいろと分析した結果、3つのことがわかった。  まず、ひとつ目。  心の声は、身体のどこかが触れ合っている間しか聞こえないこと。  そして、ふたつ目。  どうやらこの現象は一方通行で、俺の声は理人さんには聞こえていないらしいこと。  最後、三つ目は、理人さん以外の人の声は、まったく聞こえてこないことだ。  つまり、今の俺には理人さんの心の声がだだ漏れだけど、理人さんはそのことに気がつかないまま、普通に生活していることになる。  なにが原因なのかは、今でもまったく分からない  でも正直、悪くはないのだ。  全然。

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