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第1話 ソリテ視点

梅雨が明けた都心。夏真っ盛りの今、日中の気温は35度を優に超える日々が続く。 今日もスマホで天気予報を確認しソリテは気温の高さにげんなりするも配達に行かないという選択肢などなく荷物を届けに車を走らせた。 謎の上司命令で客が頼んだ荷物がどれだけ重かろう高層マンションやビルであろうとエレベーターは使用できない。その命を破ったら丸一月給料を貰えなくなる。正社員であれどそれは覆せない事実だ。 勤め始めた頃ソリテはふざけるなと思ったしいっそのこと会社を辞めてやろうかともすら思った。 こんなふざけた命令をする上司がいる場所よりも働きやすくてここよりもいくらか給料がいい場所。求人雑誌を開いて眺めソリテはその考えを捨てた。 高卒で無資格のソリテが勤めれる給料の良い仕事場などない。大抵が大卒か資格を有していなければいけない会社ばかり。 運転免許だけ持っている人間が高待遇で働けるとこなどここ以外見当たらなかった。 どれだけ薄給だろうと今の運送会社で働くしかない。 今日もソリテは暑い中を荷物を抱え運ぶ。バンへ戻り流れ落ちる汗をタオルで拭いながら次の配達先を確認しソリテは呟く。 「……いつもの人だ」 1週間に1度、決まった曜日、決まった時間を指定する所謂『お得意様』 この辺ではあまり聞き馴染みのない関西弁で話す男。 そんな彼の事をぼんやり考えながらエンジンをかけお得意様のマンションまで車を走らせた。 前の配達先から20分程でお得意のマンションに着く。彼が住む階までの階段を上りながら乾きを訴える喉にそういえば水分補給忘れてたな、なんて他人事のように思う。5階まで上り終え右奥に進めば彼の部屋だ。少しばかり乱れた息を整えインターフォンを押す。ほんの少しだけ騒がしい足音が聞こえた後、ドアが開いた。 「啓影さんにお届けものです」 テンプレートの言葉。営業スマイル。 なのに、いつも啓影は嬉しそうにして喜びを噛み締めるように感謝を述べるのだ。 「ああ、いつもありがとなぁ」 そう言って渡した受取書に啓影はハンコを押す。今は珍しいやり方な気がして思わず「珍し」と言ってしまった時は少し恥ずかしかったな、とソリテは思い返した。 初回の出来事を少しだけ回想しながらソリテは啓影へ小包を渡した。 「駄賃」なんて言われ毎度おなじみのいちご味の飴が手渡される。 最初こそは断っていたものの気付けばポケットに入れられていることが数回あったせいでもう諦めて啓影から直接受け取るようにしていた。 ソリテが飴を受け取ったのを確認すると啓影の頬が緩んだ。 どうしてそんなに幸せそうにするのか不思議だ。緩く首を傾げるも次の配達もありソリテはここにあまり長居は出来ない。 ソリテは啓影に軽く会釈をして足早に階段を降り始めた。不思議なことにいつもよりも足取りが軽く感じた気がした。

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