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第1話 哀斗視点

いつも通りサンプルを頼み俺はその日を今か今かと楽しみにしてた。 だって、その日は好きな人に会える。今はまだ配達人とお客という関係だけどゆくゆくは恋人になれたらなぁ、なんて思う。 まあ、サンプルが届くのも楽しみではあるんやけどね? そう思い数日を過ごしある程度記事を書き終えふと時計を見やるとそろそろ荷物が届く時間になってた。 スマホを手にし少し髪を整える。服はこのままでええやろか? 少し着替えた方が、なんて考えている間にインターフォンが鳴る。 さっきまでの考えが全て吹っ飛んで我ながら騒がしい足音立てながら玄関に行きドアを開ける。 息を荒げて変に思われてへんか不安になりながらもニコリと汐崎君は笑い荷物を差し出し「啓影さんにお届け物です」「ああ、いつもありがとなぁ」 鼓膜を震わす程よい低音の声に思わず反応しそうになる逸物を心の中で押さえつけながらポッケからハンコを取り出して受取書に押す。 今時は珍しいんか初めての時汐崎君が小さく零した「珍し」は忘れれへん。 録音したかったなぁ。思いながら荷物を受け取り帰る前の彼に飴ちゃんを渡す。 最初は断られるんが多かったけど、ポッケに忍ばせとるんを繰り返したらこうやって直接受け取ってくれることが増えた。 わざと汐崎君の手に触れてオトメみたいにドキドキしながら彼が受け取ってくれた事が嬉しくてニコニコしとると彼は不思議そうに首を傾げる。 その姿すら愛おしくていつまでも眺めていたかったんやけど、流石に次の配達に行かなあかんらしく会釈をして帰っていく。その後ろ姿をドアを閉めたフリしながらずーっと見えんくなるまで眺めとった。

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