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【第一章】悲しき坤澤の運命①
人間はこの世に生を受けた時に、男と女の二つに大別される。
更に、年を重ねたある期を境に、乾元 、中庸 、坤澤 の三つに再び振り分けられ、その『第二の性』がその後の人生を大きく左右していく。
全てにおいて恵まれた才能と容姿を持つ乾元。『第二の性』の半数以上の割合を占め、極普通の人間として生きることができる中庸。そして、美しく華奢な外見がありながら、不幸な運命を生まれながらに背負った坤澤。
坤澤は、地位と名誉の全てを手に入れる乾元に支配されることでしか、生きていく方法はない。そんな乾元に見つけてもらうため、大概の坤澤は売春宿へと売られていく。そして一握りの坤澤だけが、『運命の番』に出会い、幸せになることができるのだ。
しかし、運命の番に出会う確率など、夜空に輝く星々の中から硝子玉を探すくらい難しい。多くの坤澤は、売春宿で身も心もボロボロとなり、その短い人生に幕を下ろすのだ。
それでも人間は夢を見ることを諦められないようで、ある若い坤澤が皇帝陛下に見初められて後宮入りをしたことがある、などという夢物語が今もなお語り継がれている。
このお話は、今から2000年前の中国が舞台となった、ある美しい坤澤が皇帝陛下の妃になるという運命的な物語である。
◇◆◇◆
「あぅ……あ、あぁ、旦那様、これは、これは嫌です」
「何を言うか、こんなに腰を淫らに動かして……それに、首筋からこんなにいい匂いがするではないか……甘い甘い、美酒のような香りだ」
「あ、あぁ! はぁはぁ、あ、あぁ……!」
「もっと乱れて見せろ。そうすれば、また抱きに来てやる」
「くぅ……あ、あぁ!」
翠花 は両足を高く抱えられ、腹の奥を擦られ続ける。その緩やかな腰使いが、熱く昂ぶった体をなかなか絶頂へと導いてくれないのだ。燻る快感が沸々と全身に広がっているのに、その欲を解放できないもどかしさに顔を歪める。
「私はお前の綺麗な顔が苦痛に歪むのを見るのが好きなんだ」
「旦那様……翠花は、もう達したくて……あ、あぁ……旦那様!」
無我夢中で目の前の男にしがみつく。
綺麗な刺繍が施された着物は乱れ、真っ白な肌がほんのり紅く色付く。唾液で濡れそぼった唇からは、か細い嬌声が次から次へと溢れ出した。
「翠花、なんて可愛いんだ……翠花……好きだ、好きだ……」
「あ、あぁぁ!」
その瞬間翠花の中で男の熱い果実が弾け、ドクドクと生暖かい体液が広がって行くのを感じる。
やっと終わった……。翠花は、自分の上に倒れ込んできた男の体をそっと受け止めた。
「今日は、後何人に抱かれるのかな……」
行為が終わった直後、波が引いて行くように気持ちが冷めていく瞬間が翠花は嫌いだった。
「あぁ……虚しい……」
腕の中で夢心地で微睡む男の頭を撫でてやりながら、翠花は虚しさを感じずにはいられなかった。
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