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出会い1
全ての講義を終えて帰ろうとしたところで声をかけられた。
「ねぇ加賀美くん待って」
振り返ると、優し気な爽やかイケメンがにこやかに立っていた。
確か、如月くんとかいったはずだ。如月樹くんだったかな。この講義でよく見かける。
女子にはイケメンで人気で、でもそれを鼻にかけないことから男子にも人気だったはずだ。
つまり、常に多くの人に囲まれているような人で、人見知りで友達の少ない僕とは住む世界が全然違う人だ。そんな人がなぜ僕なんかを呼び止めるんだ? なにかしたかな、僕。
そんなんだから、ついびくびくしてしまう。
「ちょっといい?」
そう言って、如月くんは、みんなが建物の出口へと向かっている中、反対に奥へと続く廊下へと行く。
ほんとに、なにかしただろうか? 身に覚えがないから怖い。怖くてびくびくしながら後をついていく。
「帰るところごめんね。すぐにすむから」
「あの……なんですか?」
「突然だけど、今付き合ってる人とかいる?」
「は?」
ほんとに突然だな、と思う。
そのことと如月くんとどう関係するんだろう。
僕に付き合ってる人なんているはずないのに、なぜそんなことを訊くんだろう。
「あのさ、もし付き合ってる人がいなかったら、付き合ってくれないかな?」
「え?!」
今、何を言われたんだ? 付き合ってくれって言われた気がするけど気のせいだろうか。
きっと気のせいだ。だって、そんなこと言われるはずない。
「突然何言ってんだって感じだけど、ずっと前から加賀美くんのこといいなって思ってて。えっと、恋愛の意味でさ。だから、もし付き合ってる人がいなかったら、と思って」
え?! 気のせいじゃなかったの? 僕を好きっていうこと? イケメンでみんなの人気者の如月くんが?
突然のことに、頭が回らない。
如月くんなら、僕みたいな出来損ないのベータなんかじゃなくて、綺麗で可愛いオメガの子がよりどりみどりだろうに。なのに、なんで僕?
「如月くんアルファでしょう? 僕、ベータです」
「それで?」
え? それでって……。
「第二性がどう関係あるの?」
「だってアルファなら、オメガの方がいいでしょう。如月くんなら、どんなオメガでも選び放題でしょう。なにもベータの僕なんかを選ばなくても」
「アルファならオメガの方がいいの? 誰が決めたの? それでも俺は加賀美くんがいい。ベータでも関係ない」
如月くんはそう言い切った。
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