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出会い4

 大学の最寄り駅へと行く前に、僕と樹くんは大学の正門近くに出来た新しいカフェにいた。  ケーキが美味しいと女子たちに人気で、甘党の僕としては食べたい、と思っていたところ樹くんが誘ってくれた。  樹くんは僕が言い出せないでいても、大体気づいて誘ってくれる。今回もそうだ。   ケーキは種類が多く、どれにしようか迷ったけれど、スタンダードにモンブランをチョイスした。もうひとつ、チーズケーキと迷っていたら、それに気づいた樹くんが注文してくれて、一口くれるという。  樹くんは僕のちょっとしたことから、気持ちを察してくれるのがうまい。樹くんいわく、僕のことをいつも見ているからだよ、と笑うけれど、僕はそんなにわかりやすいタイプなんだろうか。全くわからない。  でも、こういうとき、とても助かるので、遠慮なくシェアをお願いできるのが嬉しい。  運ばれてきたモンブランとチーズケーキはとても美味しそうで、つい笑顔になってしまう。 「食べよう」 「うん」  モンブランはほのかな洋酒の味がし、甘いものが苦手な樹くんにも食べられそうだった。 「樹くん。これ、少し食べてみて。洋酒がほのかに香ってて食べれそう」 「そう? じゃ、一口ちょうだい。こっちのチーズケーキも美味しいよ。はい」  そう言って樹は、フォークを僕の口元に持ってくる。いわゆる、あ〜ん、というやつだ。たまにこうやってシェアするときに、こうやってしてくる。そして、食べるまで待ってる。 「自分で食べれるってば」 「いいから。ほら」    人に見られたら恥ずかしいと思うけれど、食べないと終わらないので、急いでパクっと食べる。 「モンブランも頂戴」  そうして口を開けて待っているので、樹の口にモンブランを入れる。 「あ、ほんとだ美味しい! ここのケーキ、甘いの苦手な俺でも食べられるね」 「そうだよね。そしたら……」 「うん。また来ような」 「うん!」    また来たい、なんて言わなくても樹くんにはわかっていて、こちらが言う前に樹くんが提案してくれる。  デートのときは、僕が行きたいな、と思っていたところをリサーチされていて、黙っていてもそこへ連れて行ってくれる。僕が行きたいと思うところばかりだ。  一度、樹くんが行きたいところへ行こう、と言ったら、「優斗の行きたいところが俺の行きたいところだから気にしないで」と言われた。結局は僕ファーストだ。  樹くんは僕に甘い。愛されているな、と常日頃から感じる。一言で言えば溺愛だ。付き合い始めることになったときは、こうなるとは思っていなかった。少し付き合えば別れると思っていたのだ。だって僕はβなんだから。

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