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出会い3

 恋人になった如月くん、もとい樹くんはとても優しかった。父はもとより、母にさえ愛して貰えなかったのに、樹くんは僕をとても大事にしてくれる。自分で言うのもおこがましいけれど、愛されていると思う。  一緒に帰ろうと待ち合わせの場所へ行くと、樹くんは既に来ていた。 「ごめん、待ったよね」 「俺は大丈夫だから、走ってこなくていいから。転んだら危ないだろ。それにほら汗かいてる」  そう言ってハンカチで汗を拭いてくれる。 「そんなに転んだりしないよ」 「でも、危ない」  僕が走ったりすると樹くんはいつも危険だから歩いて来い、という。走って、転ぶって小さな子供じゃないんだから大丈夫だと言っても聞く耳をもたない。  同じ危ないという理由で自転車も危険だから乗らないで、といわれる。最も自転車に乗ることはないからいいけれど、過保護なのだ。  だから一度それを言ってみたことがある。そうしたら、僕が怪我すると考えたら、たまらなく嫌なんだと言っていた。僕が怪我をするのなら代わりに自分が怪我した方がいいと言っていた。その後で、俺、親じゃなく恋人だけどな、と笑っていたけど、僕は親にそんなふうに言われたことはない。言ってくれたのは樹くんが初めてだ。 「そうやっていってくれるの、樹くんだけだよ。母にも言われたことない」  僕がそう言うと樹くんは悲しそうな表情で笑う。  僕が親のことを話すと、樹くんはいつもそういう顔をする。そして、その後で必ず言うんだ。 「愛してるよ」  と。    父親はもとより母の愛もよく知らずにいた僕にとって、大事にされるのは少しくすぐったい。それでも樹くんが僕なんかを大事にしてくれて愛してくれるのは本当に嬉しい。  そういえば、僕がよく、僕なんか、と言うと樹くんは少し怒る。自分を卑下するな、と。この世に不必要な人間なんていないのだ、と。  自分ではそんなつもりはないのだけど、小さい頃からだから口癖になっているようだ。  その度に樹くんは、   「誰だって愛される権利はあるし、愛されるべき存在なんだよ」  と教えてくれる。  そして、 「愛してるよ」   と言葉にしても愛をたくさんくれる。そんな樹くんに、僕はどんどん惹かれていっている。

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