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オメガになりたい9

「さっきのこと気にするなよ」  コーヒーを飲みながら、さっきの剣持くんのことを樹くんが言う。 「学内で綺麗なオメガなんて言われてるから調子に乗ってるんだと思う。ま、それを抜きにしてもかなり悪意のある言い方だけど」 「……」 「ベータと付き合っているのが暇つぶしなんて、ベータをなんだと思ってるんだよ。それに、暇つぶしで付き合ってるって言われているアルファに対してだって失礼なことだよ」  ああ、そうか。僕はベータの立場でしか考えなかったけれど、アルファだって暇つぶしで誰かと付き合うようなちゃらんぽらんだと言っていることになるのか。ということは剣持くんはベータに対してだけでなく、アルファに対してもひどいことを言ったということになる。そうしたら樹くんが怒るのも当然だ。  でも、僕は怒りはない。いや、ゼロと言うわけではないけれど、それよりもベータはどこまでいっても役立たずでしかないのか、とそれが頭から離れない。加賀美の家にとっては確かに役立たずだ。でも、他人にまで言われてしまった。  アルファみたいに優秀な種を残せない。オメガみたいに、子供を生み出せない。そう考えると確かに役立たずなのかもしれない。 「ベータが役立たずなんて考えるなよ」  樹くんは僕が考えていることがわかっているようだ。 「でも、事実だと思う。樹くんみたいに優秀なアルファでもない。かと言って子供を産めるオメガでもないんだから」 「ベータだって自分の子供を残すことできるだろ」 「でもアルファみたいに優秀じゃないし、オメガみたいに綺麗でも可愛くもない」 「オメガだから綺麗なわけじゃないだろ。ベータにだって綺麗で可愛いのいるんだから。優斗がそうだろ」 「僕?」  樹くんは何を言うのだろう。僕は綺麗でもないし、可愛くもない。 「優斗は可愛いよ。笑った顔なんて最高に可愛い。だから俺は好きになったんだよ」  僕の笑顔? そんなこと知らない。初めて言われた。 「本人が知らないだけ。俺、告白するまで結構焦ってたんだから。だって、結構優斗狙ってるやついたから」  え? 僕を? 「信じてないだろ」 「だって、何も言われたことない」 「言われてたら今頃他のやつと付き合ってたのかもな。強引に出て正解だったよ」  樹くん以外と付き合っている自分というのが想像できない。 「ま、それはおいておいてさ。ベータにだって綺麗で可愛い子はいる。オメガだけじゃない。オメガは妊娠、出産に特化した性だというだけだよ。それを言ったらアルファだってそうだけどな。優秀なんて言われてるけど、ベータにもいるだろ、大学教授とか実業家とか政治家とか。だからさ、性別なんて関係ないんだよ」  樹くんはそう言って優しい目で僕を見る。この人は一切差別をしない人だ。 「それでもオメガになりたい?」  樹くんの問に僕は頷いた。

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