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オメガとして6

 周りが次々と内定を貰っている中、小さな会社の採用試験を受け、ラッキーなことに割合大きな企業での総務部のオメガ枠での採用が決まった。簿記の資格を持っているので、ベータの頃は経理職を探していたがオメガ枠では重要な仕事は望めない。それでも番契約をしているため、番のいないオメガよりは有利だと言う。恐らく誰彼ともなくフェロモンで誘うことがないからだろう。  オメガの多い加賀美の家で育っているから、オメガの大変さはわかっているつもりだったが、就職ひとつでこんなに大変なのだ、と思い知った。それでもオメガになりたいと言ったのは自分だ。誰かに言われてじゃない。  僕が就職先が決まった頃、樹くんはお父さんの会社であるKコーポレーションで実務経験を積むために役職なしの営業職から始めることが決まった。  なんでも、樹くんのお父さんは社会を知らずに社長にする気はまったくないらしい。だから、一部門でコキ使われるんだよ、と樹くんは笑う。きっとそれで会社のことを考えられる立派な社長になるんだろう。  二人の卒業後が決まったということで、二人でちょっといいところで食事をしよう、と樹くんの知っているお店でフランス料理を食べることにした。  お店はホテルなどではなく、閑静な住宅街の一角にあった。知らなければ見落としてしまいそうな小さなお店だ。でも、以前一流ホテルのフランス料理店に勤めていたシェフが開いた店、ということで味はお墨付きだそうだ。  フランス料理のフルコースというディナーのため、スーツを着た。  樹くんはこういうところでの食事は慣れているけれど、僕は慣れないので、緊張してしまっていた。なんでも二人の就職が決まったということで、アニバーサリーコースなのだという。この店では記念日などのお祝いのときには、事前に知らせておけばメッセージ付きのお祝いデザートが付くという。 「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。食事は楽しむものだから」 「うん……」  樹くんはそう言うけれど、こんなところで食事したことなどない僕には敷居が高い。それでも、高校時代に一通りのテーブルマナーは教わったので、そこは大丈夫だと思うけれど自信はない。  僕たちがテーブルにつくと、今日のメニューが知らされる。  アミューズには、サザエのペニエ・ブルーチーズのシュークリーム。スープにはトリュフ風味のコンソメスープ。冷前菜には帆立貝柱と無花果、フルーツトマトのマリネ・キャビア添え。温前菜には黒アワビのシャンパン蒸し。魚料理にはオマール海老のソテー・アメリケーヌソース。メインディッシュには黒毛和牛のポワレ・ソースボルドレーズ。そしてデザートは普通のデザートのクレームブリュレとメッセージ付きのお祝いデザートであるオレンジレアチーズケーキがあるという。  どれもこれも高級な食材ばかりで、僕のお腹がびっくりしないか心配だ。それでも、出される料理は彩りも盛り付けも綺麗で目で楽しむことができた。

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