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オメガとして9

 樹くんのご両親と父の顔合わせの日は、緊張で朝から胃が痛かった。  もう番にはなってしまっているが、樹くんにはつりあわないとか言われないかな? いや、加賀美のネームでそれは大丈夫だろうか? そんなことを考えて、昨夜はあまり良く眠れなかったのだ。  朝、樹くんから電話があって、樹くんも緊張で良く眠れなかったと言っていた。  父とはお店の前で顔合わせの十分前に待ち合わせしていた。  樹くんのご両親に会うことも緊張するが、父と会うことも緊張するんだな、と思う。唯一緊張しない相手は樹くんしかいない。  結婚するのって大変なんだな、とぼんやりと思う。 「樹の父でございます。この度は樹と優斗くんが結婚する、ということですが、よろしいですか? 樹からベータの子と付き合っていると当初から聞いていましたが、まさか加賀美さんだとは聞いていなかったので大変失礼しました。」  樹くんのご両親は加賀美のことを知っていた。やはり伊達に政財界とコネクションを持っているわけではないらしい。  樹くんのお父さんの知り合いは加賀美からオメガを娶ったらしく、父とはそんな話をしていた。  僕も樹くんも関係ないから、黙ってただひたすら料理を食べていた。  食材はさすが料亭というだけあって、刺し身はとても活きが良くて生臭さはまったくなく、とろけるようだ。天ぷらも油くささはなく、おいしい。食材はいいものを使っているのがわかるが、先週のフレンチよりは馴染みのあるものばかりだったので、僕のお腹は大丈夫なようだ。  樹くんのお父さんと父の、加賀美から嫁を娶ったとかいう話は終わり、僕達の話に戻っていたようだ。 「二人とも大学を卒業しますし、番にもなっているので結婚は早いうちに、と思うのですがいかがですか?」  先日、僕にそう言っていたように父が早めの結婚を提案する。 「子供を産むなら早い方がいいですから」  要は早く子供を産め、という父の圧力だ。 「そうですね。もう番になっているから結婚を遅らせる理由はありませんな」  樹くんのお父さんも父の意見に同意した。早く結婚したい、という樹くんの願いは叶うようだ。僕も結婚を遅らせるつもりはないから、別に早くても構わない。  結局、僕と樹くんの結婚は一年以内で式場の空いている日に、ということになったが、樹くんのお父さんも父も色々な伝手があるから多分早くなるだろう。  結婚というのがまだ実感がない。でも、そう遠くない未来、樹くんと家族になって子供を産むのだということが決定事項となった。

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