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束の間の幸せ8

「終わったー」  僕はホテルのダブルベッドにダイブした。  緊張しっぱなしだった結婚式を終え、出席者交えての食事会は何がなんだかわからないうちに終わった。式場にほど近い、美味しい中華料理のお店をチョイスしたのに、僕は何を食べたのか、味がどうだったのかさっぱり覚えていない。樹くんに訊くと、どの料理も本当に美味しかったけど、特に北京ダックが美味しかったという。安いお店なんかだと、ぱさぱさで味がさっぱりわからないようなのもある中で、しっかりと味がしていたという。 「お疲れ様」  樹くんは、僕の隣に座っている。 「樹くんは緊張しなかったでしょう?」 「多少は緊張したけど、近しい親族しかいなかったから、それほど緊張する必要ないかな、って」  僕は逆に近しい親族だからこそ恥ずかしかったというか、いくら誓いのためとはいえ人前でキスとか恥ずかしすぎた。 「でも、緊張してた優斗、可愛かったよ。誰にも見せたくないくらい」  そう言って、身を屈め、頬にキスをしてきた。緊張してた姿が可愛いなんて、そんなことあるはずがない。そう言って睨むけれど、樹くんはどこ吹く風だ。ちょっと悔しい。 「ほんとに可愛かったんだけどな。写真できたらわかるよ」 「そうだ! 証拠が残っちゃうんだ。ねぇ、家に飾るのはやめようね? 絶対に嫌だからね?」 「デジタルフォトフレーム買ってあるよ」 「なんでそんなもの! じゃあ、別の写真にしよう。何も結婚式の写真なんかにする必要ないよ」 「どうして。結婚式の写真を飾るつもりだったんだよ」 「そんなー」 「大丈夫。寝室に飾るから、俺達以外誰の目にもふれないよ。あんな可愛い優斗誰にも見せたくないからね」  寝室とはいえ、写真を飾るのは恥ずかしいけれど、寝室なら僕と樹くんしか見れないからいいのかな? 樹くんは既に見ちゃってるわけだし。でも、ちょっと恥ずかしすぎる。一生に一度の結婚式があんなに緊張しまくってたっていうのは残念すぎるけれど。 「これで、晴れて夫夫だね。優斗のこと完全に独り占めできる」 「僕を独占したい人なんて樹くん以外にいないよ」 「大学時代はいたんだよ。本人が知らないだけ。今でもいそうだけど」 「そんなことないのに。僕は樹くんがいればそれでいい」  そう。仮に樹くん以外に僕のことを独占したいと思う人がいたとしても、僕は樹くんがいればそれでいい。僕が独り占めしていいのかわからないけれど。できればずっと樹くんの隣にいたい。  そのためには、父の言うように早く子供を産まなければ。そうすれば、樹くんのそばにいてもいいでしょう?

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