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束の間の幸せ10
「あっ……んン……あぁ」
両乳首への刺激で、僕は声が抑えられない。
「はぁ……あっ……もう、ダメ」
「気持ちいいんでしょ? 何がダメなの?」
「イキたい……」
「うん。イッていいんだよ」
「んんっ……乳首だけじゃ、イケない……」
「イケないの? 今日はお祝いだから触ってあげるけど、胸だけてイケるようにしようね」
樹くんはにっこりと笑いながら、無理なことを言う。乳首だけでイクなんて女性だって難しいだろうに、男の僕にはもっと無理だ。でも、言葉通りにペニスを触ってくれたので、僕はその刺激だけで思い切り精を放った。
「触っただけでイッちゃったの? 気持ち良さそうだね。俺もイカせて」
そう言うと樹くんは、ゆっくりと樹くん自身を僕の後孔に挿れてくるイッたばかりの体ではそれだけの刺激にも過敏に反応してしまう。
「ん。優斗の中、気持ちいい」
そう言って、チュッと額にキスをくれる。樹くんはセックスの最中にもキスをくれるので、僕はとても心が満たされる。体だけじゃなく、心が伴うセックスは気持ちいい。
「優斗も気持ちいいんだね。腰が揺れてる」
挿入されて、優しくキスされたら気持ちいいに決まってる。
「じゃあ、もっと気持ちよくしてあげるね」
そう言うと、樹くんは緩やかに抽挿を始めた。そのあまりの緩やかさに物足りなくて、もっとと腰が動いてしまう。それを知っててゆっくりと腰を動かす樹くんは意地悪だ。
「意地悪……」
「なんで? 物足りない?」
今日はお祝いだから、と言っておいて今日は随分と焦らしてくる。
「もっと早い方がいい?」
恥ずかしいけれど頷くと、一気に腰の動きが早くなる。それに耐えきれなくて、僕は樹くんの背中にすがりついて声をあげる。
「んっ。あぁ……ふっ……んン」
「うん。この方が可愛い声が聞けて俺もいいわ。もっと啼いて」
啼いて、と言われなくても、もう嬌声をあげるしかない。パンッパンッと肌のぶつかる音がして、その音にさえも犯されている気がしてしまう。
「はぁ。んっ……あぁ……」
「優斗、可愛い。ダメだ。気持ちいい。俺もイキたい」
そう言うと、腰の動きはさらに早くなり、すがりついていた背中に爪を立ててしまう。
「あぁ。イク。イク」
そう言って、僕の中に白を放つ。そうしてゆるゆると数回腰を打ちつけた後は、僕をぎゅっと抱きしめてくれる。その腕が暖かくて心地いい。
「気持ち良かった?」
こくりとひとつ頷く。
「良かった。俺も良かった」
そう言って、唇に優しいキスをひとつくれてから、樹くんは僕の隣に横になる。
「愛してるよ」
その言葉が嬉しくて、樹くんにしがみついて目を閉じた。
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