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失踪2

「おぉ。二人共よく来たな。今日は俺の誕生日だけど、母さんの好きなアフタヌーンティーだ。ほら、座って」  如月の家に行くとリビングにお義父さんとお義母さんがいた。 「父さん、誕生日おめでとう。っていう歳か?」 「いいじゃないか、いくつになったて。と言いたいが忘れてたよ。母さんが覚えてた」 「家族の誕生日はみんな覚えてるわよ。優斗くんのも」  こうやって僕を家族の一員にしてくれるお義父さんとお義母さん。ありがたい、としか言いようがない。それなのに……。 「お義父さん。お誕生日おめでとうございます。ささやかながら、プレゼントです。気に入っていただけるといいのですが」 「ありがとう。来てくれるだけで嬉しいのに、優斗くんは本当に優しいな。開けさせて貰うよ」  そう言って、お義父さんは丁寧にラッピングを開けていく。今回選んだのはカフスボタンだ。  お義父さんは立場上、華やかな場所に行くこともあるし、雑誌などのインタビューを受けることもある。そんなときに意外と目に止まるのが袖口だ。  華やかな席や、雑誌などに出る場合はカフスボタンをしているが、いくつあってもいいだろうと思ってカフスボタンにした。  選んだのは、ラウンドタイプで透明なクリスタルガラスを使用したもので、光があたるとキラキラと光って、決して華美にはならない綺麗さがある。最初は若い年代向けかな、と思って不安だったけれど、お店の人に訊いたところ、お義父さんくらいの年代の人が付けても決しておかしくない、と言われた。それこそ、華やかな席ではキラキラと輝いて綺麗だろう。   「あぁ、綺麗なカフスボタンだな。こういうのは持っていなかったな。ありがとう」 「華やかな席に似合うかと思って選びました」 「そうだね。そういう席にぴったりだ。今度付けさせて貰うよ。これは優斗くんが選んだ?」 「え、あ、えっと……」  訊かれて、ついうろたえてしまった。  僕が選んで、樹くんは少しお金を出してくれた。その場合、樹くんと一緒に選びました、っていうべきだよね。と考えていると樹くんは、そう、と答えてしまった。 「でも、少しお金を出させて貰ったよ。俺一人だったら何も買って来なかったかも」  樹くんがそう答えると、お義父さんは苦笑した。樹くんもそんなに素直に言わなくてもいいのに、と思ったけれど、実の親子だからできることだよな、と思うと少し羨ましかった。僕と父の間には絶対にないことだ。 「さあ、お茶も入ったみたいだし、お茶でも飲みながらお話しましょう。あ、今日のケーキはいつものケーキ屋さんとは違うのよ。新しいお店のなの。優斗くんも気に入ってくれたらいいんだけど。美味しいお店なのよ。食べて」  お義母さんに促されてケーキを取ると、かぼちゃとりんごのパイだと言う。一口くちに入れるとかぼちゃとりんごのほのかな甘さとりんごの酸味が合わさって、ほのかな甘みで上品だ。これなら、甘いものを好んでは食べないお義父さんや樹くんでも食べられる。お義母さんの細かな気配りだ。 「上品な甘さで美味しいですね。樹くんも食べてみて。美味しいよ」  僕がそう言うと、樹くんも一口食べると、美味しいな、これ、と言って気に入ったみたいだ。お義父さんも笑顔で食べていて、温かい家族の団欒がここにあった。

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