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失踪5

 月曜日、仕事に行っても頭は子供のことでいっぱいで、小さなミスを繰り返して自分でため息をついた。  そして日曜の夜から食欲がなく、昼はゼリー飲料で済ませた。それでも夕食はいつも通りに作った。もちろん、食欲はないから樹くんのために作っているだけ。今の僕ができるのはこんなことしかないから。  ただ、僕が食べないと樹くんに不審に思われるから、夕方お菓子を食べたから食欲がない、と誤魔化した。でも、ここにいるのはもう限界だし、いてはいけない。如月の後継者を産めないオメガなんて、ベータと変わらない。それこそ出来損ないだ。そんなオメガが樹くんのそばにいたらいけない。僕は身を引いて、どこか僕のことを誰も知らないところへ行こう。 「優斗。どうしたの? 元気ないけど」  お風呂からあがって、テレビをつけてまったりとしているときに、ふいに樹くんが訊いてくる。  僕、そんなにあからさまだった?   「え? そんなことないよ。疲れてるだけだよ」 「月曜日で? 忙しかった?」 「う、うん。それなりに。ごめん、疲れたから先に寝るね」  そう言って僕はベッドに潜り込んだ。そうでもしないと勘のいい樹くんにバレてしまいそうだから。そして、ベッドの中でぐるぐると考える。  どこかへ行ってしまおうか。役立たずの僕なんていたって仕方がないし、いたらいけない。そう結論づけ、火曜日、僕は家を出た。  いつも家を出るのは樹くんの方が早い。だから僕は、数日分の着替えを持って家を出た。でも、どこに行ったらいいのかわからなくて、ただ遠くへと思い電車に乗った。  それでも人混みは疲れてしまうので、繁華街の少し手前の駅で電車を降り、行くあてもなくトボトボと歩く。そして、歩き疲れてチェーン系のカフェに入った。アメリカンを注文し、二階席の奥の目立たないテーブル席に腰をおろす。時間は十一時半。九時少し前には家を出たはずだから、結構歩いていたことになる。脚が疲れるのも当然だ。でも、もう少ししたらこの店もお昼休憩のOLやサラリーマンでいっぱいになるだろう。かと言って他の店に移る気力もなく、かと言って飲み物だけで混んでる中、席についているのも申し訳なくて、食べる気のないサンドイッチを追加購入した。  座っていて考えるのは樹くんのことだ。僕がいなくなったと知ったら樹くんはどうするだろう。いや、でもすぐには家を出たとは気づかないだろう。帰りが遅いな、と思ってもおかしいと気づくのは夜遅くになってからだろう。  では、家を出たと気づいてどこへ行ったと思うだろう。実家に帰ったと思うだろうか? いや、それはないかもしれない。父との関係が良くないことは付き合い始めた頃から知っているのだから。だから、何があっても加賀美の家に帰ったとは考えないだろう。そうしたら樹くんはどうするだろう。

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