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4:礼二郎の女性事情①

「――ところで礼二郎、なんか目元が赤いけど泣いた?」 「え? うん」  池永の質問があまりにも唐突で自然だったため、礼二郎は思わず正直に肯定してしまった。少し焦ったが、もう遅い。 「え!? 電車で何かあったのか!?」 「え、えーっとぉ……ま、窓に映った自分の姿がカッコよすぎてつい涙が出たっていうか?」 「はぁ?」 流石にこの言い訳は苦しかっただろうか。自分で自分に見とれてしまうほど礼二郎がカッコイイのは事実──だと思っている──として。  訝しげな顔で見てくる池永の視線に背中に汗を掻きながらも、目を逸らさなかった。 「──ハハッ! お前って本ッ当に面白いな~礼二郎!」  なんとか誤魔化せたらしい。バシバシ背中を叩かれて少々痛かったが、こっちも嘘で誤魔化したのだからしょうがなく受け入れた。 「礼二郎って普通にめちゃくちゃイケメンなのに、そういう発言で台無しだよな! まー男としては付き合いやすいけど」 「台無し!?」  それはちょっと聞き捨てならない。礼二郎は霊とゴキ〇リが人よりもちょっと苦手なだけで、それ以外に自分に欠点は存在しないと思っているのだ。 「だってお前彼女いねぇじゃん。それにまだ童貞だろ?」 「うぐっ……! かっ、彼女なんていなくても、俺がパーフェクトなイケメンという事実は変わらな~い!!」 (童貞だというのも関係ない!! 事実だけど!!) 拳をグッと握りしめて高らかにそう言い返したが、池永はそんな礼二郎の言葉をさっと流して言った。 「ところで今夜、バイトないよな?」 「うん」 「合コンしよーぜ♡ ちえりちゃんにお前のこと絶対連れてこいって言われてんだ!」 「えー……またか」 礼二郎は合コンがあまり好きではない。まだ19なので酒も飲めないし、初対面の異性と話すのも実は苦手だ。だからなのか、つい女性にヒかれるような言動や行動を無意識でとってしまうところがあるのは否めない。(しかしあくまで無意識である) 先程のように、遠くから『あの人カッコイイね♡」と秋波を送られるだけなら物凄く気持ちいいのだが。

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