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③
大学へ行く道すがら、池永の話を聞き流しながら礼二郎は考える。
(大体さぁ、女の子はいったい何から守って貰いたいんだよ。霊だって見えてないし、Gは最悪自分で殺せるし、暴漢なんて男でも怖いし。もし俺が女で彼氏から君を一生守りたいなんて言われたら、絶対『何から?』って聞く自信があるぞ。金か? 結局金なのか?? それなら分からんでもないけどロマンはないな……)
「なー礼二郎、聞いてる?」
「そうだな、良かったな」
「こいつ全然聞いちゃいねぇ」
(あ、でもさっきナンパ? から助けられた時は正直ドキッとしたかも……さっきの奴、背が高くてイケメンだったし。俺ほどじゃあないけど。なるほど、女子はああいうのがいいのか……)
「なぁ礼二郎、」
「うん、俺もその意見に賛成だ」
「なんなんコイツ」
大学に着いたあと、再び池永とちえり──池永が付き合いたいと狙っている低身長の可愛らしい女子で、どことなくハムスターに似ている──に必死に頼み込まれ、結局人の好い礼二郎はその夜、合コンに顔を出した。ほぼタダ飯目当てだったが。
「ねーぇー礼二郎君ってホントに綺麗な顔してるよねぇ、めっちゃ色白だしぃ、茶髪は天然だっていうしぃ、もしかしてハーフなんじゃないのぉ!?」
「え? 違うとおもう(モグモグ)じいちゃんばあちゃん、四人とも皆純日本人だし(ゴックン)」
「お酒は飲まないの?」
「未成年なんで(モグモグ)」
「クッソマジメ~!! っていうかこの人、ずっと何か食ってんだけど~ww」
「いや、だって夕食だし……?」
礼二郎は、多分彼の下事情を知らないであろう他大学の女子達に積極的に話しかけられたり、しつこくボディタッチをされるものの、エッチしたいという下心が一切無いため(もはや修行僧のようだ)関係は一切発展しない。
ずっと素っ気ない礼二郎の態度に、そのうち女子の方が(あ、コイツ絶対ゲイだわ)と思い、諦めるのだった。
礼二郎は、自分は一生恋人もできないし、童貞のままだろうと思っている。
少し淋しい人生な気もするが、わざわざ自分から霊を見るくらいならその方が全然マシだ。――それぐらい、霊が苦手だ。
今後どうしようもなく寂しくなれば、ペットでも飼えばいいのだ。ペットは犬がいい。でも猫もいい。どっちも飼いたい。ウサギもいたら最高だし、鳥も好きだ。
(誰にも分かって貰えなくたっていい。それに人間は……俺は俺を見ているだけで、十分満足してるからな!)
そしてますます、自己愛を拗らせていくのだった。
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