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5:ヤツが現れた①

 そして21時頃、無事帰宅した。 (もうこんな時間か……。もうちょっと早く帰りたかったな) タダ飯は食べられたが、なんだかひどく時間を無駄にしたような気がする。 しかも左右からベタベタ引っ付かれたり話しかけられたりしたせいで、違う種類の甘ったるい匂いに気分が悪くなり、あまり食欲も湧かなかった。食べれるだけは食べたが。(会計のとき、『お前一人で食いすぎだろ!!』と池永に怒られた。知ったこっちゃない) 今朝ナンパから助けてくれた男──彼の白檀の香りは、とても心が落ち着く匂いだったのに。もうカケラも残ってないのが少し寂しい。 シャワーを浴びてとっとと寝ようと思った、そのとき。 「!?!?」 視界の隅で、小さくて黒いナニかがサカサカサッと動くのを見た。 (お、お、落ち着け礼二郎、落ち着け!! 先日バル○ンを焚いたばかりじゃないか、アイツのわけがない、部屋は毎日綺麗にしているし、ゴミだって溜めこんでない! 落ち着け、落ち着……) カサカサカサ 「キャァァア───ッッッ!!!!!」 今朝電車で無理矢理悲鳴を飲み込んだ分、盛大な悲鳴が喉から漏れた。

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