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礼二郎が住んでいるのは、打ちっぱなしのコンクリートがなかなかオシャレな単身者用のマンションだ。6畳1Kで少し手狭ではあるが、一人暮らしだし掃除が楽なのでわりと気に入っている。 三部屋ずつの三階建てで、礼二郎は三階の真ん中の部屋に住んでいた。 そして突如リビングに現れた黒い家庭内害虫は、左右どちらの部屋か、階下から遊びに来たに違いない。 礼二郎はGが大の苦手なため、毎日の掃除は勿論のこと、黒いキャップを置いたりバル○ンを焚いたり、わりとマメにG対策をしている。 それでも入ってくるなんて…… もう、どうしていいのか分からない。 「さ、殺虫剤を……ってほぼ空!! なんで!? アッこないだベランダにいたちっこいヤツを殺した時か……!」 まさに絶体絶命。窓を開けてなんとか奴を外に出したいが、窓を開けたらまた新たなGが侵入してくるかもしれない。 霊とGのどちらが怖いかと聞かれたら間違いなく霊だが、Gも普通に怖い。動きが気持ち悪すぎて無理よりの無理。  霊は怖いだけで今のところ実害はないが、Gは攻撃されると躊躇なくこっちへ向かって飛んで来たりする、かなり危険な存在だ。 「う、うぅ~っ、どぉしよう……誰か助けてぇ……っ」 どこに逃げるか分からないので目を離さずにいるが、怖すぎてさっき食べたものを全て戻しそうだ。 電話して池永を呼ぶか……しかし今奴を呼べば女子も付いてくるに決まっている。それだけは絶対に嫌だ。女子が来るということはすなわち、霊を自ら部屋に呼び込むようなものだからだ。 ピンポーン… 突然の呼び鈴にビクッとしたが、礼二郎はなるべくGから目を離さないようにしてすぐに玄関へ向かった。 「は、はい?」 「隣の者ですけど。……さっきすっごい悲鳴が聞こえたけど大丈夫ですか?」 若い男の声だった。 これは天の助けだと思い、礼二郎はGがそこから動かぬ事を願ってドアスコープで相手の姿も確かめもせずにドアを開けた。

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