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15:サラリーマン①

「そこの君、大丈夫かい? 気分が悪いのなら席を替わろう」 「あ、ありがとうございます……ご親切にどうも……」 「って、君は昨日のかわ……ンンッ、イケメン大学生じゃないか! 昨日とは違う時間帯なのに会うなんて偶然だなぁ~」 「え……?」  周りの乗客には大学生のイケメン同性カップルが人前で堂々とラブシーンを繰り広げているようにしか見えなかったが――片方が具合が悪い、というのもイチャつくための口実ではないかと思われていたり、いなかったり――そんな痛カップルの片割れである礼二郎に声をかけたのは、二人の後ろに座っていたサラリーマンだった。  そしてその人物は、偶然にも昨日礼二郎をナンパしかけていたリーマンだったのだ。 「ほら、ここに座りなさい」 「ど、どうも……昨日から世話をかけまして」 「いやいや気にしないで。──ところで君は朝が弱いのか? 昨日も倒れてたし、低血圧なんじゃないか?」 「いや、そのぉ……」  昨日は窓の外に見えた血まみれの女性の霊に驚きすぎて腰が抜けたのだ。今日は……  そこまで思い出して、礼二郎はハッとした。 (この声……もしかして、昨日の女の人の霊か!?) 根拠は無いものの、何故かそう思った。 「朝はしっかり食べないとダメだぞ~?」 「いや、あの……ハイ……」  サラリーマンは再び礼二郎に会えて嬉しいのか、馴れ馴れしく話しかけてくる。 礼二郎は言われなくてもしっかり食べてますよ! と言い返したかったが、そんな元気はなかった。

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