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②
「……別に、くっ憑けただけだから彼女は物理的には何もできないと思うよ。もちろんおっさんが死ぬ可能性はあるけど、それは別に彼女のせいじゃなくておっさんの運次第っていうか……」
「そんな!」
「でも俺たちだってそうだよ? 運がいいから今も無事に生きてるだけなんだ。霊だって皆、元は俺たち同様普通に生きてた人間なんだよ」
「………」
(そんなこと、分かってる……。分かってる、けど……)
礼二郎はぎゅう、と両手を握りしめた。
そんなド正論を言われたら霊に怯えまくっている自分が滑稽だし、霊に対して失礼なんじゃないか、と思ったりもする。
でも、怖いものは怖いのだ。理屈で解決できるものではない。
「ごめん、えらそうに説教するつもりはなかったんだ。ちょっと妬いたっていうか……」
「妬いた?」
誰が、誰にだろうか。
「――まあ、あのおっさんが彼女に呪い殺されることは無いだろうけど、しばらくは夢見が悪くなったり、地味ぃ~な不運が重なったりはするだろうね。それくらいは別にいいんじゃない? 自分を殺した奴がまったくの無自覚なんて、ムカつくのも分かるし」
「地味な不運って……?」
「何もないところでコケたりとか、コンビニで買い物するときに10円足りないとか」
「あはっ、ほんとに地味だ……」
礼二郎が少し笑ったところで電車は大学の駅に着き、二人は降りた。
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