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「……別に、くっ憑けただけだから彼女は物理的には何もできないと思うよ。もちろんおっさんが死ぬ可能性はあるけど、それは別に彼女のせいじゃなくておっさんの運次第っていうか……」 「そんな!」 「でも俺たちだってそうだよ? 運がいいから今も無事に生きてるだけなんだ。霊だって皆、元は俺たち同様普通に生きてた人間なんだよ」 「………」 (そんなこと、分かってる……。分かってる、けど……)  礼二郎はぎゅう、と両手を握りしめた。  そんなド正論を言われたら霊に怯えまくっている自分が滑稽だし、霊に対して失礼なんじゃないか、と思ったりもする。  でも、怖いものは怖いのだ。理屈で解決できるものではない。 「ごめん、えらそうに説教するつもりはなかったんだ。ちょっと妬いたっていうか……」 「妬いた?」  誰が、誰にだろうか。 「――まあ、あのおっさんが彼女に呪い殺されることは無いだろうけど、しばらくは夢見が悪くなったり、地味ぃ~な不運が重なったりはするだろうね。それくらいは別にいいんじゃない? 自分を殺した奴がまったくの無自覚なんて、ムカつくのも分かるし」 「地味な不運って……?」 「何もないところでコケたりとか、コンビニで買い物するときに10円足りないとか」 「あはっ、ほんとに地味だ……」  礼二郎が少し笑ったところで電車は大学の駅に着き、二人は降りた。

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