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20:名前呼び①
「じゃあ、俺はこっちだから。講義室まで送っていかなくて本当に大丈夫?」
「うん、色々ありがとう。俺のせいで柴君まで2限サボらせてごめんな」
「槐君のせいじゃないよ」
「いや、どう考えても俺のせいだよ……」
礼二郎が気分が悪くなって途中下車しなければ、普通に間に合ったのだ。でも礼二郎は柴と立場が逆だったとしても、自分も付き合ってサボるだろうなとは思った。
「いや本当に俺のせいだってば。槐君が霊の声が聞こえるようになったのは、多分俺と関わったせいだからね」
「え?」
柴の聞き捨てならなさすぎる言葉に反応しかけた、そのとき。
「よぉっ礼二郎ーっ! お前珍しく講義サボってたな!」
「い、池永っ!?」
友人の池永が現れて、後ろからガバァと礼二郎に突撃してきた。
「おや? 見ない顔だ。どーも、経済学部で礼二郎のダチの池永でーす!」
池永は人見知りしないので、流れるように柴に自己紹介をした。
「……理工学部の柴です。良かった、彼ちょっと具合が悪いみたいだから講義室まで一緒に行ってあげてください」
「えっ、そうなのか? 了解了解、大丈夫か? 礼二郎」
「もう平気だってば……。じゃあ柴君、俺バイトが終わったらすぐに帰ってご飯作るから待っててくれる?」
「分かった。……礼二郎君、何かあったらいつでも連絡して」
「? うん」
(今、名前……?)
ちらりと上目遣いで柴を見ると、確信犯のように微笑まれた。
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