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 柴は続けて言った。 「一般的に、エロいことしてたら霊は出てこないっていうのはよく分からないな……。ラブホってかなりの高確率で出るんだよ。本人たちがセックスに夢中になってて気づかないだけじゃないかな……」 「な、なるほどぉ……」 童貞なので、『セックス』という単語にすらドキドキしてしまう礼二郎だった。 「て、ていうか俺今まで霊に親切にしたことなんて多分ないんだけど、なんで好かれるんだろ!? 俺が美しいから!? 」 「それもあるだろうけど。……なんていうか、オーラが好かれるんだよな……」 「オーラ?」 礼二郎は以前合コンで『私って他人のオーラが視えるの~』と言う女子に数人会ったことがある。そのオーラだろうか。 礼二郎のナルシスト発言については、柴も認めているのでスルーだ。 「霊って基本寂しがり屋だから、優しくて清らかなオーラを放つ人間に寄っていくんだよ。メンタルが弱い人とか……あ、礼二郎をディスってるわけじゃないからね?」 「大丈夫、俺が豆腐メンタルなのは分かってるから」 自分の弱さを潔く自覚している礼二郎に、柴はクスッと笑った。 「だから礼二郎は凄く霊に好かれるんだよ。おまけに霊媒体質だし」 「優しくて清らか……? よくわかんないな。京介も俺と同じなの?」 柴はとても豆腐メンタルには見えないが。 「俺は単なるS級霊媒体質なだけ。嫌な奴だし、霊に好かれる要素はあまりないな」 「え? 京介はめちゃくちゃ良い奴だろ! どこが嫌な奴なんだよ!」 「ふふ」 礼二郎は力いっぱい否定したが、柴は微笑で流した。その顔にもドキッとした。 「まあ、俺には生まれた時から虎鉄が憑いているから、浮遊霊なんか憑きたくても憑けないよ」 「え、じゃあこてっちゃんってもしかして成犬なのか?」 「いや、霊は歳取らないでしょ」 「あ、そっか」 ズバリ指摘されて、礼二郎は馬鹿なことを言ってしまった、とまた赤くなった。 「可愛いなぁ」 「え?」 「なんでもないよ」 聞き間違いでなければ、柴はまた礼二郎のことを『可愛い』と言った。 カッコイイと言われるのは慣れているが、可愛いと言われるのは新鮮でまだ少し照れくさい。

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