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③
(……京介は、最初から俺に優しかったな。普通、なのかもしれないけど)
「礼二郎、ギュッてしてあげようか」
「……いいの?」
「もちろんいいよ、俺たちは恋人同士なんだから。――おいで」
京介の手が顔から離れてしまったが、その代わり優しく腕を広げられた。
(そっか、恋人って……抱きついても、一緒に寝てもいいんだ。もう大人だから恥ずかしくて家族にはこんなこと出来ないし……だからといって、女の子相手にも出来ないけど。霊に邪魔されるし……)
「ありがとう」
礼二郎は躊躇なく京介に抱きついた。手を背に回して、収まりやすいポジションを探す。抱き枕みたいに全身で抱きつく体勢が一番居心地が良かった。隙間がないくらい、ぎゅうぎゅう抱きしめられるのがいい。
「礼二郎、俺のこと抱き枕と勘違いしてない? あと二時間は寝れるかな……アラームセットしてる?」
「うん。……京介、好き……」
「ぇっ?」
「京介は好き……やさしいから……」
(優しくて頭が良くてイケメンで、その上怖いものが無いなんて反則だ。除霊師ってなんだよ、かっこよすぎるだろ……虫も躊躇せずに殺せるし……いいなぁ)
「え、えーっと……俺は好き、って。誰か嫌いな人がいるの?」
「みんな……」
「え?」
「みんな、きらい……」
小学校の頃のことだ。もう誰一人、名前も顔も覚えていない。あの事件のあと、親は礼二郎を転校させたから。
「みんなって? あ、寝ちゃった。寝ぼけ方が可愛いけど、心臓に悪いよ礼二郎……あークソ、寝る前に抜いたのにまた……」
京介は礼二郎がまた深く寝入ったのを確認したあと、トイレに籠った。
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