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怖いものが多くて殻に閉じこもり、他人との線を引いたのは自分だ。だからこんな状況になったのも、全部自分が悪いのだ。 (誰か助けてって……助けを求めても、誰が俺を助けてくれるんだっけ……) 一度だけ、軽率に他人を信用した。家族と同じように信じて貰えると思ったから。 だけど…… 『礼二郎は嘘つきだ!』 『霊が視えるなら、あの有名なお化け屋敷に連れて行こうぜ!』 『そこで霊と仲良く暮らせばいいじゃん!』 信じて貰えなかった。 だから、こんな場所にいるのだ。 (ああ、嫌だ……) 涙が零れる。 怖いものは全部嫌いだ。 でも、でも…… (人間は、もっと嫌い) 「──礼二郎、礼二郎!」 激しく揺さぶられて、礼二郎はハッと目を開けた。 「しばく……京介?」 「大丈夫? 凄く魘されてたよ」 「え……?」 まだ、カーテン越しの窓の外は暗い。 「今って……何時?」 「まだ4時過ぎだよ、もう少し寝よう」 「……」 「怖い夢でも見たの?」  京介の大きな手が礼二郎の頬を拭った。どうやら泣いていたらしい。 礼二郎は、涙を拭いて離れていこうとしたその手を取ると、もう一度自分の頬を包むように当てた。 「礼二郎?」 「ごめん、嫌だろうけどちょっとだけ手、貸して……」 「あ、いや、全然構わないよ。びっくりしただけで嫌なわけないし……」  礼二郎は目を閉じて、夢の内容を思い出そうとした。  けど、何も思い出せない。凄く恐ろしくて嫌な想いをしたことしか……。

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