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第1話

「おい、なんで逃げるんだ? 俺の言う事が聞けねぇってんなら、お前が男好きってことバラすけどいいのか?」 助けてください、僕は脅されてます。しかも、この学校一の面倒な俺様イケメンに! 「そ、それだけは勘弁してください!!」 「じゃあ、ちゃんと良い子に俺の為につくせんだろ?」 「ぅ……」 「あ? 聞いてんのか、変態メガネくん?」 怖いと思って、声を小さくして、俯いて縮こまっていれば、前から近づいく足音で顔を上げれば、眼帯を付けた顔が目に入っては壁に押されて、メガネを触られる。 「流石にきめぇお前の股間には手を触れさせはしねぇけど、どうせ、こんな俺にさえも興奮してんだろ?」 声を出すことはせず、目を逸らしていれば、触らないと言ったはずの彼の膝が股間にぐいっと当たり、「ヒィッ!」と思わず、びっくりした声を上げる。 「うわ、これだけでお前、変な声出すのかよ、変態メガネ」 流石に引いたのか、膝をグリグリするのはやめて、後ろへ下がる為、少しだけホッとした顔をすれば、気に入らないのか、また近づいてきて、メガネを取られる。 「メガネ付けねぇ方がいいかもな」 「ちょっ……! 前が見えないって!!」 「あーあ、だらしねぇの」 メガネを探す素振りをする僕を見てはケラケラと笑って、僕の頬を摘んできた。 「お前、コンタクトにすれば? そしたら、そうやって、俺に変態な目なんか向けねぇだろ」 「コンタクトの方がお金かかるんだって!」 「へぇ〜、じゃあ、買ってやるから、そうしろよ、変態メガネ」 え、何それ、俺、脅されてる立場なのになんでそこまでするの!? とびっくりしていると、あ、と何かを思い出したかのように、僕こと、会津広光に俺様イケメンは僕の手に1000円札を握らせる。 「購買行ってこいって命令、コンタクト買ってやる変わりにやってこい」 凄い眼光で見てくるので、また怖さが背筋に過り、メガネを奪い取ってから購買の方へ一目散に逃げた。高校二年の春、僕は俺様イケメンの加賀勇助に男好きだと知られて、主従関係を強制的に結ばれました。勇助くんはこれでもノンケです。僕のせいも相まって、BLとかゲイとか調べちゃってるみたいです……。どういうこと? 発端は始業式から一週間くらいは経っただろうか、それくらいのときに僕は加賀くんに出会った。別に特にこれといったイベントって言うものは発生していなくて、ただすれ違っただけだ。周りからは恐れられている存在で、誰も寄り付こうともしない感じのオーラを放ち歩いてただけ。問題児なのは人をコマのように扱ったりするところ、先生に変な態度は取らない。だけど、同級生には取るっていう感じ。同じクラスじゃないけど、隣のクラスで、僕的には凄く気になった。昔から女の子には惹かれなかった。何故そうなのかはよく自分でも分かってないが、僕は異性でなく、同性になんかこう……胸をきゅっとすることが多かった、それだけ。 すれ違って良いなと思った放課後に隣のクラスを覗いたら、勇助くんだけがいて、しかも寝てたから、思わずというか、そんな無防備な姿見たら、誰だって、近付いちゃうじゃん? 綺麗な顔と右目の眼帯に見惚れてたら、彼は起きちゃって、僕に気が付いてしまう。 「誰だよ、お前」 「え、あ、いや、偶々隣のクラス覗いたら、君が寝てたから起こそうかなって思って」 咄嗟の言い訳をして、顔を赤くして目を逸らせば、彼は青ざめた顔をするので、首を傾げれば、彼は席を立って僕の胸倉を掴む。 「お前……」 「え、な、何!?」 状況が分からずにテンパっていれば、腹パンされて、僕は蹲る。 「……最低だなお前。この俺様に向かってそんな端ねぇもん見せつけてくるなんて」 腹パンの痛みに耐えながら、言葉の意味を理解しようとして、目線を下にすれば、僕は彼の前で勃起していた。ハッとなれば、「きっしょ」 とだけ言われて僕は立ち上がり、彼の手を掴んでしまう。 「きっしょい手で触んな、また腹パンされてぇのか?」 「そ、その……これは生理現象であって……」 「……あってなんだよ、あー……黙ってて欲しいのか、ゲイってことを、ふーん」 どうでも良さそうな目でこっちを見る彼に僕は涙目になっていれば、悪そうな顔をして、僕にこう言ってくる。 「黙ってて欲しいなら、俺様の下僕になるんだな、それくらいの報酬がねぇのなら、黙るわけねぇだろ、きっしょいんだからな」 「えっと……」 「あー、いや、強制的に下僕だな。俺様に勝手に興奮して勝手にそーなったんだからな、決まりだ、下僕」 勝手に決められて、え!? とアタフタしていれば、僕の額に強めにデコピンを食らわせられる。そして、最初の命令を受けることになる。 「下僕、そこの鞄を俺の家まで運べ」 「え!?」 「バラされてぇのなら、俺に鞄渡せ」 う、嘘だろ!? と思いながら、僕は鞄を手に取り、首を横に思い切り振る。 「じゃあ、俺を見失わないように付いてくんだな」 そう言われてはさっさと廊下に出て、下校としようとするので、僕は「待って!!」と叫んでは後を追いかけた。 「えっと、購買これとこれしか売ってなかったんだけど……これで大丈夫?」 「ん、買えたんならまだマシだろ。それとお前のところの弁当なんか食えば、丁度いい塩梅になるしな」 「えぇ!?」 食堂で隣同士で座り、弁当を開けていれば、そんなことを口にして、僕から箸を奪い、甘めの卵焼きを口に入れられてしまう。 「あ……僕の好きなやつ……」 「お前の好きなものは俺が先に食う。好きなものを与えると思うなよ」 ガッカリした顔をすれば、耳元で「間接キスだろ、この箸」と俺様特有の低い声耳攻めが始まるため、耳を咄嗟に塞ぎ、顔を赤くすれば、どうでも良さそうな顔で「キモすぎ、お前、バラさなくてもバレる顔してんぞ」と言われて目の前の弁当をパクパク口に入れる。 「勇助くんのせいだよ」 「はぁ? 何言ってんだ、俺のせいにはならねぇよ、お前の責任だっ」 軽めのげんこつを落とされる。いつもだけど、軽い暴力はしてくるんだよな、でも、こういうパシリ以外は全然優しいけど、僕の休日さえもこの人で埋まるから勘弁して欲しい。休みが欲しいよ、少しだけ。 「なんだ、お前、その犬みたいなシュンとした顔は。そんな顔しても俺様は優しくねぇからな」 「いや分かってるけど、た、たまには飴ちゃんも欲しいな……なんて」 「飴玉ならやってあげてもいいけどな、あー、違う、ビー玉か」 「そ、そういうんじゃないんだけど!?」 気怠い顔をされては鼻を摘まれる。指を離して欲しいくらいの時間が経ってから、離される。 「早く食べねぇと昼メシ抜きになるけどいいのか、お前」 「あ……、そ、そういうの早く言って欲しいんだけど!?」 アタフタしながら、弁当を食べていれば、隣で「うるせぇ、音立てずに食えねぇのかよ」と小言を言いながら、僕が買ってきたパンや牛乳を勇助くんは食し飲んでくれた。やっぱり悪い人ではないんだよな、ただ、何て言うか、気難しいだけ? なのかも。 「と言うか、飴ちゃんならやるだろ、コンタクト。メガネよりコンタクトの方が変態くさくねぇからな。ま、俺様の金で買うんだから、無くしたりしたら、弁償だけどな」 「……そ、そういえば……確かに……」 べ、弁償は怖いけど、確かにそれは飴ちゃんかもしれない。弁当を食べ終わった頃に言われて、ハッとした。と言うか、勇助くんはお金持ち……の家生まれなのかな……と思ったりする。それなりのマンションだったのは覚えている。だけど、上がらせてもらったことはまだ無いし、マンションに入る前で、さようなら毎回してるし、まぁ、ご主人様の家には簡単には入れてもらえないよね、執事にでもなれば話は違う……って何考えてんだ! と首を横に思わず振ってしまう。 「あと何分かしたら時間になるから、またな。片付けはお前の仕事だから、そのままにしとくわ」 さっき食べた物のゴミはそのままで、はぁ、と溜め息を吐きながら、自分のを片付けたあとに彼のゴミも処分した。

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