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 一つ、やたら静かな教室があって思わず足を止める。 「ん?獅子谷じゃん」  後ろから追いついてきた亮雅が口にしたのを聞いて、じっとそのクラスを見つめた。  教壇に立つスラッとした黒髪の男。  淡いグレーのシャツに黒っぽいネクタイをして長めの前髪にシンプルなメガネ。  聞こえてくる程よい低さの声は意外と心地よく聞こえてすんなり耳に入ってくる。  男にこの言葉はおかしいかもしれないが、美人で無駄のないその立ち振る舞いに目を奪われてしまった。 「圭斗?どった?担任に見つかるとメンドくね?」 「担任?」  さっさと通り過ぎた亮雅が小声で言ってくるのを聞いて眉を寄せる。 「サボってばっかだからって……担任くらい覚えてやれよ!獅子谷怜旺。俺ら二-Fの担任よ?」  朝なんてまともに来たことはないし、帰りまで居たこともほとんどない。  そもそもこんな見捨てられたような“電気工学科”で真面目に受けているのはロボットがお友達のオタク共くらいだ。  オタクと、バイクとケンカに明け暮れたクズの掃き溜め。 「そんなん知るか」  またペシペシと亮雅の横まで行ってそのまま通り過ぎる。 「どこ行くんだ?」 「マリン」 「オッケー!」  いつものラブホを口にすると、亮雅はスマホを出して素早くどこかに連絡をし始めた。 「……あぁ!んじゃ、な!」  スマホを下ろすとニッと笑う。 「リカとサホとミヤビが来るってよ」  刺激が足りない日々。  亮雅が集めた女を適当に抱いたって時間が潰れる程度でしかない。

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