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「『情報技術基礎』ができていないとこの先困るぞ」
「うるせぇ」
シャーペンを出して差し出されてもそっぽを向いて何とか抵抗を試みる。なのに、
「いいのか?お前の父お……」
「うるせぇ!黙れ!クソがっ!!」
親父を話題にされるのを感じて自分の机の脚を蹴った。
ガタンと揺れて机は獅子谷が座っている祐生のイスに当たる。
「お前も家族とは色々ありそうだもんな」
ボソッと言われた言葉は小さ過ぎてよく聞こえなかった。
睨みつけると、獅子谷はフッと表情を緩ませる。
「とにかく毎週、業後にプリントな」
立ち上がってプリントとペンを拾った獅子谷はワイシャツのポケットにペンをしまってからプリントをファイルに戻した。
「勝手に決めんな!」
「さっきも言っただろ?お前に拒否権はない」
「うるせぇ」
「毎日がよかったのか?」
フッと笑われてちょっとドキッとしてしまった頭を振る。
クソムカつくだろーがっ!!
「今日は補充の説明だけした、ってことにしといてやるよ」
「うるせぇ」
「明日は朝一から来いよ」
「うるせぇ」
睨んだのに、獅子谷は俺の髪をぐしゃぐしゃと掻き乱して笑った。
「触んな!」
「いっぱい悩め!で、いっぱい泣け!でも、前だけは見失うなよ!」
ファイルを持ってそのまま去って行く後ろ姿をただ呆然と見つめてしまう。
頭の中に蘇るあの声。
それと獅子谷の声がピタリと重なる気がした。
「何でお前がそれを……」
俺だけになった教室にただ溢れ落ちた。
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