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 ただ何となく脅されたのはわかってこっちも身を乗り出した。 「お前さぁ」 「教師に向かってお前とか言うな」 「うるせぇ!デリヘルで働いてる奴が偉そうに教師とか言ってんなよ?」  さすがに効いたのか、獅子谷の眉がピクリと動く。  それを逃さないように口の端を上げると、獅子谷はメガネを押し上げてこっちを見返してきた。  なぜか焦りなどは感じられない冷静な目。  その反応にイラッとする。 「バラされたくねぇんだろ?」 「そんな脅しは通じない」  目を細めてみても獅子谷は平然としていた。 「ならバラされてもいいってか?」 「好きにしろ。証拠はない」 「あ?あの予約画面……」 「それが俺だという証拠は?」  スマホを出して検索しようとすると、フッと笑って獅子谷が俺のスマホを奪っていく。  慣れたように操作してパッと見せられた画面はあの『ピンクキャット』の“レオ”のページだった。 「それだろうが!」  腰を浮かせると、さっき拳が入った腹に痛みを感じて動きを止める。 「これのどこが俺なんだ?」  ニヤリと笑う獅子谷はコツコツと指の爪で画面を突付いて机に頬杖を付いた。 「こんなの証拠にはならない」  確かに名前があるだけでそこには写真も何もない。 「っ……でも、あの日の……」 「それが俺だという証拠は?」  焦りも何もない変わらぬ声音にイラつく。 「そんなのは僕ではないですよ?」  スッと教師用の声にして微笑む獅子谷に、俺はギリッと歯を鳴らすことしかできなかった。

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