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「なぁ、夏祭り一緒に行かね?」
クルッとシャーペンを回して見つめると、
「行かない」
獅子谷は即答して赤ペンで容赦なくノートにバツを書いた。
「何でだよ」
「は?答え違ってる」
「そっちじゃなくて!」
俺がシャーペンを置くと、獅子谷はため息を吐いてメガネを上げる。
「むしろ、何で俺と行くんだよ」
「好きだから!」
「八神たちと行け」
こんなにはっきり気持ちを伝えても獅子谷は素っ気ない。
「あんたじゃないと意味ないだろうが!このヤりたい盛りの俺がもうずっと誰ともヤってねぇんだぞ」
「そんなん知るか」
こんなこともぶっちゃけたって表情も変わらなかった。
「……実は彼女が居るとか?」
「は?誰に?」
顎でシャクると、獅子谷はため息を吐く。
「居ねぇよ。んなモン」
睨まれてホッとした。
実は彼女が……なんてことになったら笑えない。だが、
「恋愛対象って女か?」
「……」
不安になって確認したって獅子谷は答えなかった。
俺でさえ女には不自由しなかったんだから、伝説だったあの頃の獅子谷にはかなりの女が寄って来たはずだ。
「あんたが抱くこともあるのか?」
「お前に関係ない」
気になって聞いても獅子谷は一切答えてはくれなかった。
「男もいいなら俺でもいいよな?」
「俺にも選ぶ権利はある」
「だから俺を選べって!」
「は?どんな自信だよ」
メガネを外して呆れたような獅子谷。
「まさか……客取ってないだろうな?」
「お前に関係ない」
「ヤダ」
ギュッとその手を握ると、獅子谷は困ったように眉を下げつつ小さく笑った。
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