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「あぁ。自分でも驚くほど本気だよ」  隠さず答えて腕にある革のブレスレットに触れる。 「は?それってお前の憧れ……え?」  気づいたらしい亮雅はじっとこっちを見てきた。 「獅子谷が伝説の男ってことか。あいつ、ケンカもやたら強ぇもんな」 「口外すんなよ」  髪を掻き乱して舌打ちする亮雅に釘を刺すと、亮雅はこっちを睨んでくる。 「は?何で!!」  バンッと机を叩く姿を見てゆっくりと息を吐き出した。 「あいつがそんなん望んでないってか……あいつにとってあの伝説の頃は今は重い足枷なんだよ」  もう短くなった前髪を掻き上げて床にあるラグの上に座り込んだ。  獅子谷の過去を知れば知るほど、こっちまで胸が苦しくなるから。 「はぁ!?お前、今、どんな表情(かお)してるかわかってるか!?急に腑抜けやがって!」  グッと襟元を掴まれてゆっくり亮雅を見る。 「あいつのためならどれだけでも腑抜けてやるよ?」  確かにケンカしていた獅子谷はカッコよかった。  一緒に背中を合わせた時は身体が震えるほど嬉しかった。  でも、あいつはまだ過去に縛られて一人で苦しんでいる。  俺はそんな獅子谷を解放して一緒に笑い合いたい。  過去は変えられないが、未来は今からどれだけでも選んでいけるから。 「はぁ!?」 「悪ぃな。ガチなんだよ」  微笑んでやると、亮雅は舌打ちしてそのまま部屋から出て行った。

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