101 / 258
101
「あぁ。自分でも驚くほど本気だよ」
隠さず答えて腕にある革のブレスレットに触れる。
「は?それってお前の憧れ……え?」
気づいたらしい亮雅はじっとこっちを見てきた。
「獅子谷が伝説の男ってことか。あいつ、ケンカもやたら強ぇもんな」
「口外すんなよ」
髪を掻き乱して舌打ちする亮雅に釘を刺すと、亮雅はこっちを睨んでくる。
「は?何で!!」
バンッと机を叩く姿を見てゆっくりと息を吐き出した。
「あいつがそんなん望んでないってか……あいつにとってあの伝説の頃は今は重い足枷なんだよ」
もう短くなった前髪を掻き上げて床にあるラグの上に座り込んだ。
獅子谷の過去を知れば知るほど、こっちまで胸が苦しくなるから。
「はぁ!?お前、今、どんな表情 してるかわかってるか!?急に腑抜けやがって!」
グッと襟元を掴まれてゆっくり亮雅を見る。
「あいつのためならどれだけでも腑抜けてやるよ?」
確かにケンカしていた獅子谷はカッコよかった。
一緒に背中を合わせた時は身体が震えるほど嬉しかった。
でも、あいつはまだ過去に縛られて一人で苦しんでいる。
俺はそんな獅子谷を解放して一緒に笑い合いたい。
過去は変えられないが、未来は今からどれだけでも選んでいけるから。
「はぁ!?」
「悪ぃな。ガチなんだよ」
微笑んでやると、亮雅は舌打ちしてそのまま部屋から出て行った。
ともだちにシェアしよう!