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第4話-2
体調が元に戻ってもサミュエルは僕の傍から離れなかった。
「サム、もう僕一人でも大丈夫だよ」
「だめだ」
あれからサムは同じ授業じゃないときは教室への送り迎えをしてくれるようになった。食堂にも、シャワー室にも一緒についてくる。サムは無言で仁王立ちのまま周りを牽制していた。僕は余程サミュエルに心配をかけてしまったのかもしれない。きっと彼は喧嘩の発端が自分に関わる事だったから責任を感じているのだろう。なんだか申し訳ない。気のせいかすごい過保護にされてるような気がする。でも、僕も男子だ。守ってもらうようなひ弱じゃないぞ。母さま譲りの見た目でよく女顔と冷やかされ、お姫様扱いされたこともあるが僕はいつもそんな奴らを片っ端からぶん殴っていた。女子じゃないんだ!
ここに来てからも剣の腕を鍛えてはいた。成績も悪くはない。実践経験はないが模擬対戦なら負けたことはない。
「あのさ。僕は鍛錬でも剣でも上位レベルにいるつもりなんだけど」
「アルの太刀筋は見事だ」
わわ。褒められた!サミュエルったら僕の太刀筋とかみてくれてたの?うわあめっちゃ嬉しいなあ。素直によろこんじゃうよ~。
「ありがとう。へへへ。でもさ、それならなんでずっと守ってくれてるの? 僕ってそんなに頼りないかな? 一人じゃ戦えないように軟弱に見える?」
「いいや。アルは良い騎士になると思う」
「じゃあなんで? もちろんサムが居てくれるのは嬉しいよ。でもちょっと甘やかされすぎてる様な気がするんだ」
「約束した」
「約束? それは僕と?」
「そうだ。アルに『傍にいて。どこにも行かないで』と言われ、俺は傍に居ると約束した」
「ひぇっ。そ、それは僕が言ったの?」
ウソだあ。そんな恥ずかしいこと僕が言ったのか?信じられないっ。
「そうだ」
「いつ?」
「少し前」
「嘘……。いや、そういえば言ったような気も」
うろ覚えだが言われてみれば発作を起こしたときに、心細くなっていろいろとサミュエルに甘えてしまったような気がする。あちゃあ。きっかけは僕自身だったのか!
「覚えてないのか」
「うぅ。なんとなくしか覚えてない」
「……そうか」
「うん。ごめん」
「いや。いい」
「本当にごめん。はっきりと覚えてなくて」
「とにかく俺は約束したのだ」
「そ、そうなんだ」
「そうだ」
ああ、詰んでしまった。なんてことだ。僕が頼み込んでいたなんて!サミュエルに悪いことをした。きっと真面目なサミュエルは約束をたがえないように僕の傍に居てくれてるのだろう。ああ、なんて良いヤツなんだろうか。
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