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閑話 帰郷-1

「久しぶりだな。あいつら元気にしてるかなあ」 「あいつらとはアルの弟のことか?」 「そうなんだ。弟は二人いるんだ。やんちゃでさ。大きくなっただろうなあ」  卒業を前に、僕は一度子爵邸に帰ることにした。 「正式な申し入れはすでに済んでいる」  サミュエルが言っているのは結婚の申し入れはという意味だろう。とりあえず僕からも手紙は書いて送っておいた。両親からは信じられない、大丈夫なのかという返事だった。いきなり婚姻だなんて心配してるに違いない。サミュエルと相談しこれは直接会って説明したほうが早いだろうと言う事になる。ここ数年ずっと寮生活だった。家に戻って婚約話をされるのが嫌で帰らなかったのだ。 「父さまと母さまにも会うのは久しぶりだ」  手紙だけは頻繁に近況報告などを続けてはいた。だけど顔を見せるのは数年ぶりになる。僕って親不孝なのかな? 「アル。顔を見せてくれ」 「どうしたの?」  ぎゅうっとサミュエルに抱き込まれる。無言のままむぎゅむぎゅむぎゅ。 「く、くるひぃ~」 「っ! 悪い。そのつい……」 「もぉ、サムの馬鹿チカラ! どうしたのさ?」 「心配なんだ」 「何言ってるの。次の日には会いに来てくれるんでしょ?」  本当は二人一緒に揃って挨拶に帰るつもりが急な騎士団の仕事が入り、サミュエルだけ一日遅れで追いかけてくることになった。 「ああ。必ず迎えに行く」 「ふふ。迎えに行くじゃなくて挨拶に来てくれるのでしょ?」 「そうだった。婚姻の挨拶に行く」 「ふふ。婚姻の許しをもらうんじゃないんだね」 「婚姻は決定事項だ。……い、いやなのか?」  いつもの精悍さはどこにいったのか男らしい眉毛がへにょっと下がる。 「まさか。凄く嬉しいよ!」 「よかった。俺も嬉しい」  結婚前からこんなに甘くてどうしよう。夢みたいだ。夢だったらどうしよう。  その晩は別々のベットに就寝した。翌朝は一人で帰省しないといけないので足取りはきちんとしていないといけないからだ。サミュエルとは体格差があるので閨事のあった翌日は僕の足腰が立たなくなることが多い。ふらふらの足取りで帰るのはどうにも気が引けた。 「アル……」  捨てられた子犬のように背中を丸めたサミュエルがこちらを見つめている。心なしか目がウルウルしてるようにも見える。こりゃあきっと僕も重症なんだろうな。サミュエルがとってもかわいく見えてしまう。抱きつくと口の端をあげて嬉しそうだ。ちゅっちゅっとバードキスを繰り返すと唇をぺろりと舐められ舌を絡められ朝から濃厚な口づけをされた。 「はぁ……サムのばか。これから帰省するのに」 「それはマズイな。こんな艶っぽい顔を他の奴に見せたくない」 「もぉ! サムのせいだろ!」  ぽかぽかとサムを叩くとくくくと笑い出す。僕もつられてふふふと笑いい返した。 「アル。好きだ」 「うん。僕もサムが好き」 「仕事が終わればすぐに会いに行く」 「うん。待ってる」

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