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閑話 帰郷-2

 半日馬車に揺られて僕は子爵邸に帰ってきた。 「アルベルト! よくぞ戻った!」 「「兄さま! お帰りなさい!」」 「おお。元気だったか我が弟よ!」 「疲れてはないか?」  アルベルトの姿を目にすると口々に家族が一斉に喋りだした。 「あはは。我が家って感じだ。ただいま。アルベルト・ツイリーただ今戻りました。皆元気だった?」 「さあさあ、よく顔をみせてちょうだい」  母さまが僕の頬を挟み込む様に手を当てる。 「少し背が伸びましたね。帰ってきてくれて嬉しいわ」  僕は母さまを抱きしめた。ほんの少し小さくなった気がする。きっと僕の背が伸びたせいだろう。 「そうだ、よく帰ってきたな。もう何も心配はいらないぞ」  父さまの言葉がなにかひっかかる。 「心配とは?」 「兄さま! 僕背が伸びたのです。並んでみてください」 「え? ああ。本当だ! すごいなあ。それに声変わりしてるじゃないか!」  なんてことだ。あんなに可愛い弟たちが低音の声になっている! 「はい。僕たち上の兄上と声が似てるってよく間違えられるようになったのですよ」 「そうかそうか。おおきくなったんだね」 「ところで兄さま、馬車に乗っていたこれらのお荷物はどこに置いときましょうか?」 「ああ。それは皆へのお土産だよ。ブラッドリー家からのものなんだ」 「「ブラッドリー家からの?」」  弟たちが父さまに視線を送る。父さまの顔が難しそうだ。まさか。結婚に反対されてるのか? 「アルベルト。話がある」 「はい、父さま」  兄弟達は一旦、別の部屋へ移動し、僕と長兄と父さまと母さまだけとなった。 「いろいろと話は聞いている。お前の立場も理解しているつもりだ」  サミュエル側から婚姻の打診があった話のことだろうか。 「アルベルト。寄宿学校は閉じられた場所だ。辛いこともあっただろう。でももう我慢しなくてもいいんだ」 「そうですよ。高位貴族のわがままにつきあわなくても良いのです」  それはジュリアンの家の話だろうか? 「では僕たちの事は……」 「ああ。了解してるよ。もうそろそろ来られる頃だ」  そろそろ来られる? サミュエルが来るのは明日のはずだが? なんだか嫌な予感がする。僕の家族は穏やかだが少し間の抜けたところがある。何か勘違い、いや誰かに何か吹き込まれてる様な気がする。 「アルベルトには感謝しているよ。僕の士官の後押しをしてくれたと聞いている。あちらと家族になったらもっとお近づきになれるだろうし」 「待って待って。それはいったいなんの話さ!」 「何って侯爵家との縁談話しだよ」 「はあ? 僕の相手はサミュエルだよ」 「いや。それはお前、脅されてたんだろ?」  なんだそれは! 一体誰が僕の家族にそんな嘘を言ったんだ! というか、なんで皆騙されてる? 兄上の士官の話ってなんなのさ。

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