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14話-2

「落ち着いたら話すつもりだったのだ」 「……他に隠してる事はないの?」 「変な噂が流れている」 「どんな噂かはっきり教えてよ」 「それは私めが……」  デセルトが言うには僕らがここに来る前にサミュエルがこの地の領主としてやってくることは前もって領民達には知らされていたらしい。だがそこで尾ひれがついたようだ。故意に誰かがつけたのかもしれないが。  サミュエルが辺境地へ追いやられたのは義母のマイラの仕業だと。日頃から嫌がらせを受けていたからそう思われたのだろう。それと僕が同行するということで、義弟の地位をあげるためにわざと男の婚約者をつけられた。サミュエルはそれを嫌がっているが仕方なく同行させているという内容だった。 「怖いな。噂の中にほんの少しの真実が混じっているから皆信じやすくなる」 「……くそっ」 「サム……アンジェリカと恋愛的なことは?」 「ない!絶対ない!」 「本当に?信じてもいいの?」 「アルベルト様。それは私からも申し上げます。サミュエル様はアンジェリカ様のマシンガントークが苦手でいつも距離をとられてました」 「あいつは思い込みが激しいのだ」 「おそらくは周りの環境のせいかと。娘を使って職位を上げたいというのはどの貴族も考える事でしょうし。ただ、奥様が存命時に伯爵家とは仲が良かったのも事実でございます」 「……父上は認めていない」 「え?公爵様は認めてないの?」 「ですが、ここは辺境の地。王都からも離れておりますし、口約束だけでも通じるところがあるのです」  どうやら僕が思ってるよりも面倒なようだ。この地は公爵のものだが、管理は執事のデセルトや近隣の伯爵家に任せていたところもあるらしい。そのために目をつぶっていた部分があったのだろう。 「恥ずかしながら、私も最初は噂を信じておりました」  デセルトが頭を下げる。 「しかし、サミュエル様のアルベルト様を見つめる仕草や表情でそれが間違いだと気づきました」 「では、使用人の方々も?」  そうか。初日から皆が遠巻きにしていたのはそのせいだったのか! 「わかった。最初から何もかもうまくいくなんて思ってないよ。デセルト、この領地についてもっと詳しく教えて。僕は文官としても学んできたからその伯爵さんとやらが関わってる仕事も詳しく聞きたい」 「はい!おまかせください」 「アル……すまない」 「ううん。僕、なんで公爵様がすぐに僕たちの婚姻を認めなかったかわかった気がするよ」 「え?……」    公爵様。貴方は僕がサミュエルにふさわしいか、この地で辺境伯を支えれるのかを試されたのですね? 「くそっ!やってやろうじゃないか!」  売られたケンカは買っても良いよね?

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