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第20話-1 余韻も冷めぬうち*
パレードが終わり城に戻ってきたときには夜になっていた。デセルトや侍従たちが笑顔で出迎えてくれる。
「「「お帰りなさいませ」」」
「ただいま!」
「さあさ、団の皆様も。おつかれになったでしょう?宴を用意しておりますよ」
「わあ。ありがとう!」
さすがはデセルト。気が利くぅ!今日は結構な距離を移動した。これが公爵領なんだなって感じたよ。これが全部サミュエルの領地になるのだと思ったら僕も頑張らないといけないと実感した。この目できちんと領地を確認できてよかった。一日で回れる場所しか行けなかったけど。割とみんな好意的だったので安心した。
「よし!皆今日はご苦労だった!たくさん飲んで食べようぜ!」
団長のヴァイスが声をかけると皆一斉に「オー!」っと返事をし賑やかになった。
「いやあ、普段から駆けまわってるが行進すると違うなあ」
「おう、なんだか俺もう騎士団になった気がしたわ」
「あはは!気が早いなあ。でもそうか。遠征とかあるんだよな」
「そうだぜ!良い予行練習になったかもしれねえな」
「近いうちに王都から騎士団長や副団長が来てくれる。皆も身体を鍛えといてくれよ」
「はい!サミュエル様!」
「サミュエル様バンザイ!」
なんかいい感じ。僕もやっと皆に覚えてもらえたようで嬉しいな。
「アルベルト。疲れただろう?」
サミュエルが腰を抱いてくれる。二人並ぶとどうもサミュエルの手の位置が僕の腰の辺りに来るらしい。すぐに抱き込まれてしまう。
「ううん。今日はサミュエルの隣で居れて嬉しかったよ。周りからおめでとうって言われて本当にうれしかった。ふふふ。こんなので本当の結婚式になったらどうなっちゃうんだろうって。怖いぐらいだよ」
サミュエルの目元が柔らく緩む。ああ。この顔。好きだなあ。
「あんまり可愛い事をいわないでくれ」
「ん?何が可愛い?」
「全部だ。アルベルトの全部が可愛くて愛おしい」
「へ?……」
うう……僕ってまたサミュエルのどこかのボタン押しちゃった?最近甘い言葉が突然あふれ出すことが増えてきた。多分、僕がサミュエルの萌えどころの|ツ《・》|ボ《・》を押しちゃうんだろうけど。自分ではそれがどこなのかがわからない。
「アルはもう食べたか?」
「うん。お腹いっぱいだよ」
嘘だ。今日の事で興奮しすぎてあまりお腹が減っていないんだ。
「そろそろ部屋に戻ろうか?」
サミュエルが耳元で囁く。僕は耳元で囁かれるのに弱いみたい。顔が熱くなっていく。
「うん。ヴァイスさん達にあいさつをしてから……」
「いやいい。飲んだくれどもに今のアルを見せたくない」
「え?今の僕って……」
ちゅっと目じりにキスをひとつされるとドキドキでいっぱいになる。
「うぐっ…………」
がばっと突然抱きかかえられると足早に部屋へと連れて行かれる。
「な?何?どうしたのさサム?」
「こんな可愛い顔っ。他の奴に見せてたまるか!」
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