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第30話-2

 少しづつだが領地経営も少しは理解できて来た。公爵であるサミュエルの父親は僕をどう評価したのであろうか? 「アル様~。今月の売り上げも順調ですだ」  ライナスが月間の収支報告に来てくれたようだ。 「そう?よかった」 「へい。お母さまに教わった野菜のピクルスの瓶付けや果物の皮の砂糖漬けの評判がええですだ。ピクルスは年配の方に。砂糖漬けは若い女性の方に人気だそうですだ。」  あれから僕は新事業を立ち上げた。騎士団員も増え大所帯になってきたからだ。王都から助成金はあるが武器の調達や城の増設。ケガもするし皆凄く食べるから食費もかかる。男子が多いって大変なんだなぁ。母さまの苦労が身に染みるよ。  収穫が少ない時期には女性たちに手伝ってもらってこの地の民族手芸品も作る事にした。  今はとにかくやれることは全部やって何か一つでも軌道に乗ればいいと思っている。 「アル!王都から届いたぞ!」 「ん?サム何が届いたのさ」  それは公爵からの婚姻の承諾書だった。 「……サム……これって。僕認めてもらえたの?」 「そうだ!すぐにでも式をあげよう!」 「え?待って何の準備も……」 「出来ておりますよ。衣装の準備も終わっております」  ブルーノが胸をはる。この日が来るとわかっていて用意してくれてたの? 「いつの間に?」 「この間、季節用の服を試着された時に、細かな寸法を測らせていただきましたので」  そういえばあの時はやけにあちこち測りまくるなあとおもってたんだよな。ああ。うちの執事はよくできている。 「俺は承諾書なぞなくてもすぐに式をあげたかったのだがな」 「だめだよ!ちゃんと皆に認めてもらわないといやだ」 「……よくがんばったな」 「うん。……うん、ありがとう」 「…………泣くな」 「あれ?嫌だな。僕泣き虫になっちゃったのかな?」 「……俺の前ではいくらでも泣いていい。お前の可愛い泣き顔を見られるのは俺だけだ」  そう言ってサミュエルは僕を抱きしめる。僕の泣き顔が誰にも見えない様にしてくれた。 「サムに出会えて良かった」 「それはこちらのセリフだ。あのままアルに出会えてなかったら、今の俺はここにはいない。恐らく無茶な戦い方をして命を落としていたかもしれぬ。人を信じる気持ちになったのはアルのおかげだ」 「サム。僕こそ、目的もなく未来も不安だった僕に生きる意味を与えてくれたのはサムだよ」 「目的?」 「うん!僕はこの地をもっと豊かにして行きたい。サムと共に生きていく場所だもの!」 「アル。再度誓おう。俺と共に生きていってくれ」 「もちろん!」  この先いろんなことが起こるだろう。時には路頭に迷うことも嘆くこともあるだろう。それでも僕の隣には君が居てくれる。それだけで僕は幸せになれるんだ。 「愛している」 「ふふ。僕もだよ」

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