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第4話

 ラドリア国は『不毛の地』として知られた国だ——。  国王は残虐でとても醜いという噂もある。  気候に恵まれない砂漠の土地で農作物がほとんど育たず、過去にはなんども飢饉がおきて、国民の半数以上が亡くなったこともあるほどだ。  そんなラドリア国がナリスリア国の『ギフト』を持つオメガ王子・王女を嫁に欲しがるのは当然だろう。  荒れ果てた土地になによりも必要なのは、農作物の成長にふさわしい気候だからだ。  ラドリア国王のたびたびの要請を受けて、フウルの実父のナリスリア前国王は、『第二オメガ王子のナリスをラドリアに嫁がせる』という約束をした。二年前のことだ。  が、——。  その父王が崩御してフウルの義母のエリザベート王妃が国の実権を握ると事情が変わったのだ。  王妃は実子のヘンリーに王位を継がせたがった。 「ヘンリーの方が王にふさわしいわ!」  と言い出したのだ。  実の息子のヘンリーをラドリアに嫁に出すなど絶対にしたくないのだ。  そしてそれは他の王族や貴族も一緒だった。  国を滅ぼしかねない『塩混じりの雨』を降らせるギフトを持ったフウルよりも、『晴れ日』のギフトを持つ第二王子のヘンリーを次の王にと望んだ。  そういう事情は、フウルにもよくわかっている。  だけどまさか、自分がヘンリーの代わりに『偽者の花嫁』として嫁ぐことになるとは思ってもみなかった。  ——僕がヘンリーの身代わりに嫁ぐということは、ラドリア国を騙すということだ⋯⋯。ラドリアの人々を騙すなんて、そんな悪いことはできない!  だけどフウルに選択肢はなかった。  義母のエリザベート王妃に逆らえるはずがないのだから。 「わかりましたね、フウル?」 「は、はい⋯⋯」  こうしてナリスリア国の第一オメガ王子、フウル・ルクセンは、不毛の土地といわれるラドリア国へ、偽の花嫁として嫁ぐことになったのだった——。 続く

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