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第2話

小田島 由(24)と、後輩の目黒 翼(22)は、 当初ホテルにて性欲処理をする事を毎晩のルーティンとしていた。 いわゆるセフレの関係だった。 最初は目黒の片思いだったが、 由も目黒の気持ちに応える形で2人は晴れて両想いとなった。 以前は性欲を持て余す由の希望で、 仕事終わりにホテルに直行し事を致してその日に解散する。 それがルーティンだった。 その後、ホテル後にご飯を食べて帰るを繰り返していた。 恋人となった現在はホテルには行かず、週末どちらかの家に泊まり一緒の時間を過ごす。 それが最近のルーティンになったが・・・ 「あっん」 後ろから突かれて由は気持ち良さそうに喘いだ。 今夜は由の家でゆっくりする事に。 2人で夕食を作り、のんびりした後、 お互い風呂に入り、由が甘える形でセックスへとの流れになった。 「由さん・・・好き」 目黒はいつも嬉しそうに由を抱く。 彼の上に乗り、自分の硬くなったモノを挿入しながら腰を上下に動かしながら、由の腰をゆっくり撫で回す。 「はっ・・・目黒、もっと奥」 「ん」 気持ち良さそうな由の首にキスをして、彼の身体を起き上がらせて由の乳首をいじりながら腰を激しく動かす。 「あっあっあっ」 由の硬いモノを手でイジりながら、同時にイく。 脱力してベッドに横たわる。 目黒に背中を撫でられて、ビクッと身体が反応する由。 「こら、今イッたばっかだろ」 「由さん、お願い」 おねだりされて、由もまんざらじゃなかった。というか、 由は思っていた。 足りない。 目黒が足りない。 以前は、ほぼ毎日ホテルに行っていたのだが、 今はセックスの回数が週末だけになってしまい、足りなくて平日はほぼ一人でシていた。 確かに週末しか合っていない為、会った時は一晩中抱かれ気が済むまでシてもらえるが、 圧倒的に目黒が足りなかった。 休日は独り占めしているが、外に出かけるよりもシている時間が多く、これは付き合っていると言えるのかとも感じていた。 由は目黒ともっと一緒にいたいと思っていたが、 具体的にどうすればいいのかは、よく分からなかった。 何故なら、目黒と付き合うまで誰ともちゃんと付き合った事がなかった。 いつもワンナイトで性欲だけを満たしていたから。 由は休憩室でコーヒーを飲んでいた。 一人でスマホをイジっていると、 「お疲れ様です」 休憩室に入ってきたのは、目黒だった。 「おお、お疲れ」 一瞬彼の方を見るが、由は再びスマホに目を戻した。 目黒は最近由の態度がおかしいことに気がついていた。 週末どちらかの家に行って、 同じ時間を過ごす時はとことん甘えてくるが、 職場では由はあえて目黒と距離を取っているように見えた。 目黒は由の隣の席に腰掛ける。 由は少しだけビクッと反応した。 目黒はそれに気が付かないフリをしていた。 「由さん」 「んー?」 「何かありました?」 「何が?」 「最近ちょっと気になって」 控えめに聞いてみる。 目黒に悟られないように、 「何もないよ」 と、平静を装い由は席を立ち、休憩室を出る。 「・・・まったく」 目黒ははあっと溜息を吐いた。 由が嘘が付けないタイプである事は知っていた。 「あいつ悩んでるぞ」 そう声かけてきたのは、 由の大学時代の同級生で他の部署の主任である源。 「お疲れ様です」 「おお」 源は目黒の隣の座り、 ミネラルウォーターを飲みながら、 「あんまり大きい声で言えないけどさ、あいつ小さいから家族の愛とか知らないで育ったから人とどう向き合って良いのか分からないんだよ」 「え」 「両親は小さいときに亡くなって、祖母に育てれたけどすぐに病気で亡くなって、それから施設で育ったから、人の愛とかに疎いんだ。でも人の温もりを求める所があるからさ」 人に対する欲求が人より多いのは、 小さい頃から、愛が不足して生きてきたから。 自分の欲求を言えないのは、 人とどう接するのかを知らないから。 でも、本当は誰よりも愛を求めている。 「そういうの分かってやってくれ」 「・・・そうだったんですか」 目黒は自分を反省した。 由の事、分かっていなかった。 本当は寂しかったのに、それを言える性格じゃない。 その夜。 「おまちどうさま」 由は、目黒の兄のラーメン屋に来ていた。 「いただきます」 お気に入りの塩ラーメンをすする。 今は由だけしかいなく、店内は貸し切り状態だった。 この店の店主である目黒の兄はとても優しく、本当の兄のように話しやすい。 目黒には言っていないが、週に1回か2回はかならず来て、 話を聞いて貰ったり聞いたりしていた。 「最近、どうですか?翼とは」 翼とは目黒の名前である。 「仲良くさせてもらっています」 「良かった」 笑顔になる目黒の兄。 由はふとラーメンを食べる箸を持つ手を止める。 「翼くんは、良いやつです。一つも不満なんてない」 沈黙。 「俺が、もっとって、欲しがっているだけです」 こんな事彼の兄に言う事じゃない。 でも、由の感情が溢れてくる。 「俺、小さい頃から身内がいなくて施設で育ちました。学生の時は自分は人に対する愛とか分からなくて、人に何かして欲しいなんて思わなくて、誰といても同じで」 箸を置いてうつむく由。 「でも、目黒だけは違ってて」 思いが溢れてくる。 「もっと一緒に居たいし、俺のことだけ考えてほしいし、離れたくない・・・・なのに、上手くそれを伝えることが出来ないんです」 自然と涙が溢れてくる。 おしぼりで顔を隠す由。 「あんたって、ほんと馬鹿だな」 その声に、はっとする由。 気が付くとカウンターに座る由の体を、 後ろから覆いかぶさるように立っている目黒。 彼が逃げないように。 由の動きが止まる。 「・・・いつから居たんだ」 「ずっといた」 「・・・」 「何で俺に言わないで、あいつに言ってんだよ」 「言えるかよ」 「何で」 「言えないよ・・・もっと一緒にいたいなんて、そんな欲張りなこと」 弱々しいその言葉に、 目黒はふうと息を吐いて、彼の頭を優しく撫でた。 「俺も同じ気持ちだよ」 「え・・・」 由は顔を上げる。目黒は優しく笑っていた。 「というか、俺がどれだけあんたに片思いしてたと思ってんだよ」 「・・・」 「週末だけなんて足りないに決まってんじゃん」 目黒も自分と同じ気持ちだった。 それが嬉しくて、由はまた泣き出した。 慌てる目黒。 「ち、ちょっと、泣くなよ」 そういって由の頭を抱きしめた。 「あーあ、翼が泣かせたー」 「うるさいよ!」 炊きつける兄に、目黒はあたふたする。 その光景に、由は泣きながら笑い出した。 それを見てほっとする目黒と兄。 目黒は由の頭を優しく撫でた。 その後、2人は由の家に向かった。 家に付くまで由はずっと泣き続けていたが、 家に着くとようやく落ち着いた。 「落ち着いた?」 「ん」 由はふうと息を吐いた。 目黒はベッドに腰掛ける由の隣に腰掛け、 「言いたいこと、全部言っていいよ」 由の背中を擦りながら、優しく言ってやる。 「ちゃんと受け止めるから」 臆病な彼には、はっきりとした言葉が必要だとおもった。 由はベッドの上で腰掛ける彼の膝の上に乗り、 目黒にぎゅっと抱きついた。 「週末だけじゃ、目黒が足りない」 ぼそっと呟く由。 「足りないから、毎日自分でシてて・・・」 「えっ」 それに驚く目黒。 考えれば、性欲が強いからと以前はほぼ毎日ホテルに行っていたのだから、 分かることだが。 由は目黒の首に吸い付くようにキスをして、そのまま匂いを嗅ぐ。 「会社で顔を見ると、たまらなくなるから、なるべく話さないようにしてた」 「それであの態度か・・・」 目黒は色々合点がいった。 由の顔を見つめ、チュっとキスをする目黒。 そのまま舌を絡ませて、今度は深くキスをする。 「俺達付き合って半年だから、あまり重いこと言うと引かれるかと思って言わなかったけどさ」 目黒は由のシャツを脱がしながら、彼の滑らかな肌を撫でながら、じっと彼を見つめて、 「俺あんたの事、一生離す気ないから」 射抜くような目で由を見つめる目黒。 「目黒・・・あっ」 乳首を舐められて、声を漏らす由。 そのまま目黒は自分のシャツを脱ぎ捨てて、由のズボンを脱がす。彼を仰向けに押し倒し、彼の後ろを解していく。いつも自分でシていたと言っていたので、すぐに挿れれそうだ。 裸でじっとこっちを見てくる目黒を見つめるだけでもうイキそうだ。 目黒は由の足を持ち上げ、 「あんまり優しくできないかも」 「ちょ・・あっ!」 答えるより早く、目黒の固くて太いモノが由の後ろにズクズクと侵入してきた。 「ああっ!あっん」 腰を揺り動かされながら、強引にキスをしてくる目黒に、由も興奮していた。 もっと強引に奪われたい。 俺なしじゃ、ダメになるくらい。 目黒はトロトロになっている由の顔を手でそっと押さえて、 正面から彼を見つめ、 「一緒に住みませんか、由さん」 「え・・」 「帰る場所が一緒なら、不安にならなくていいだろ?」 そう優しく言う目黒は笑顔だった。 ずっと一緒にいたいと思ってくれている。 同じ気持ちだ。 由は嬉しくて言葉にならなかった。 目黒は、ぐいっと置くまで打ち付けて、 「あんっ」 由は気持ちよくて喘ぐ。 目黒はそれを楽しんで、まっすぐに彼を見つめる。 「返事は?」 腰は動かしたまま、あっあっと喘ぐ由は、真剣な目をした彼を見て、 「翼」 彼にキスをしながら、 「一緒に住もう」 「ほんと、あんたって・・・」 初めて名前を呼ばれて、目黒は顔を押さえた。 そして一気に腰の動きを強くして上下に揺さぶる。 「あっあっもうイクッ・・!」 やけに艶っぽい声を上げる由に、目黒は今まで挿れていなかったもっと奥まで突いてくる。 「んあっ、そんな奥までいれたらおかしくなるぅ」 「もっとおかしくなって」 そう言って目黒は由のまぶたに、頬に、耳元に順番にキスをしていく。 由はじれったそうに彼の顔を掴んで、目黒の唇をうばう。 「口にしろよ」 「ふふっ」 まるでそう言わせたかったかのように、嬉しそうに笑う。 それがあまりにも可愛くて、由は目黒の上に乗り自分で後ろに挿れて腰を上下させる。 「ん・・あっあっ」 気持ち良さそうに顔を上げて喘ぎ続ける由の姿をマジマジと見つめ。 「エロいながめ」 目黒は由の乳首をイジりながらたまらなくなっていた。由はちくびをいじられながら、びゅくびゅくと小さくイッている。 「ずっとイッてて止められない・・・んっ」 「はっ、俺ももうダメ・・・」 由の腰をぐいっと掴んで一気に揺さぶり目黒もイく。 まだ由の中に入ったまま、目黒は彼を抱きしめ、 「由さんの中にずっといたい・・・」 ぎゅっと抱きしめられられながらそんな事をいうもんだから、 由は嬉しくてまたキュッと締める。 それに気が付く目黒は、 「分かりやすいな」 「・・・黙ってて」 真っ赤になりながら顔を両手で覆う。そして目黒のモノがまた大きくなっていくのが分かる。 「ちょ」 「・・・ごめん」 謝りながらも、目黒はベッドに横になったまま少しだけ腰を揺り動かす。 「あっあっ」 素直に反応する由。 「由さん」 起き上がりながら目黒は、彼の股を広げさせ 「ごめん」 「えっ、あっ!」 驚く暇も与えぬまま、由は再び甘やかされるのだった。 数カ月後。 2人は大型連休を使って、引っ越しをする事に。 「目黒ー、これで全部か?」 「はい」 2人で決めた2LDKのマンションはそれぞれの部屋があり、先に由の荷物が届き2人で由の部屋に段ボールを運ぼうとした時に、すぐに目黒の荷物も届き2人でそれぞれの部屋に搬入っせていた。 「荷物多いな。てか俺が少ないのか・・・」 「すみません。これでも減らした方なんですけど」 そう言いながら目黒は額の汗を自分のシャツで拭う。シャツが少しだけめくれ上がり彼の締まった腹筋から胸の下まで丸見えで、それを思わず凝視する。引っ越しの準備が2週間ほど続き、その間は1度も致していない。 正直由は下半身という意味で限界だった。 その由の視線に気が付き、 「由さん?」 声掛けられて、はっとした由は彼に背中を向けて、 「さて、片付け再開するか」 そう言って自分の部屋に戻ろうとする。 「由さん、先にカーテン取り付けましょうか」 「?うん」 なぜ急にカーテンを取り付けるのか?と疑問に思いながら、 とりあえずリビングのカーテンを2人で取り付ける。 「じゃあ、他の部屋も・・」 そう言って別の部屋へ移動しようとした由の腕を目黒は掴んで、 リビングのソファに彼を押し倒す。 「うわっ、ちょっと目黒何す」 「翼」 目黒はソファに仰向けになった由の上に跨り、 由の手にチュッとキスをしながら熱っぽく彼を見つめ、 「翼って呼んでくださいよ。せめて家では」 囁くようにそう言って、 「さっき俺の身体、物欲しそうに見てたでしょ?」 「えっ、あっ…」 目黒は自分のシャツを脱ぎ捨て、 「もっと見ていいてすよ。でも由さんも見せて」 と由のシャツのボタンを外し胸を露わにさせる。さんざん目黒が弄んだせいで、最近は乳首を少し弄っただけでツンっと立ってしまう。目黒が触るだけで彼の色白の肌が赤く染まる。 「あんまり見るな・・・」 「どうして?今まで散々見てるでしょ?」 という目黒に、由はじっと目黒の裸を上から下まで見つめ、 「お前の裸がエロすぎて、すぐにイキそうなんだよ」 「・・・エロいのはあんただよ!」 そう言って、由のズボンを荒っぽく脱がせ彼の後ろを解してやる。 「あっあっ」 「さっきまで弄ってたみたいな・・・」 「さっき弄ってた・・・トイレで」 「は?」 「我慢の限界で」 「俺に言えよ」 そう言って由の両足を抱えて、準備万端の自分の硬くて太い自分のモノをズブズブとすぐに挿入していく。 「んあぁ」 由は気持ち良すぎて、目を閉じて感じまくり自然と腰を動かしていく。 「エロいなほんと」 上下に揺さぶり、もっと奥まで挿れていく。 「あっあっやぁっ」 「くそっ、何でこんなに気持ちいんだよ、あんたの中」 そう言いながら、強引に由のキスを奪う。 とろけた顔で、由は目黒に抱きつき、 「もっと、目黒もっとしてぇ」 由は身体を反らせて、気持ち良さそうにヨガる。 「あんまり煽るなよ」 「煽ってな・・・あん」 「くそ、かわいいなっ」 腰を揺り動かしながら強引にされるのがたまらない。 由は我慢していた2週間分、たっぷり甘えた。 「あ、まさかカーテン先に着けたのって」 あの後2人で風呂に入り、濡れた髪をタオルで拭きながら、急にハッとして呟く由。 「俺の事抱くために…」 「え、今更?」 気づいてなかった事に驚く目黒。 今更気が付いて照れる由。 目黒は由の髪をタオルで拭いてやりながら、 「我慢してたのは、自分だけだと思うなよ」 「へ…」 気の抜けた声を漏らしながら、ギラギラした目で由を見下ろす。 「言っとくけど、2週間分なんて、まだまた足りてないからな」 「えぇ」 そう言いながらも、嬉しそうな由。 こほんと咳払いして、 「とりあえず、もう少しでみんな来るから、少し片付けるぞ」 「はいはい」 「こんにちはー」 その後、ラーメン屋を営む目黒の兄と由の同僚源夫妻が引っ越しのお祝いに来てくれた。 「新居祝だよ」 目黒の兄は、大量のオードブルを作って持ってきてくれた。 「わっ!ありがとうございます」 由は素直に喜ぶ。 「俺も、色々持ってきたぞ」 と源も奥さんと一緒に有名店のデザートなど持ってきてくれた」 「ありがとうございます源主任」 受け取りながら目黒は喜んだ。 源の奥さんのかな恵さんは元々同じ会社の同僚で、由とも顔見知りだった。 「今日は色々手伝うから、よろしくね」 「かな恵さん久しぶり、今日はありがとう」 かな恵はふふっと笑い、 「しかしキレイな賃貸ねー、これが2人の愛の巣かー」 「言い方古いぞ」 「時代関係ないから」 そのやりとりに由はくすくすと笑う。 リビングの荷出しを手伝ってもらい休憩がてらみんなで食事をし、 楽しい時間はあっという間に過ぎた。 とりあえず2人でベッドの組み立てを終え、 気が付いたらすでに19時を回っていた。 「今日はありがとう皆」 由はお土産をそれぞれに渡す。 「また遊びにきてくささい」 「ありがとう」 目黒にそう言われ、笑顔で会釈するかな恵。 「じゃあまた連休明けな」 「おう」 源に手を振り、由はドアを閉めた。 その途端、 「由さん」 「え・・・んっ」 玄関で由をドアに追いやりぴたっと密着して唇を奪う。 舌を絡ませて、深く深く吸い付くように。 「んんっ」 あまりにも強引でそれにまた興奮しながら、由は目黒の首に腕を絡ませる。 長くキスをして、目黒はようやく口を離す。 「すみません・・・我慢できなくて。やっと2人きりになれたし」 「謝るなよ。・・・俺だって」 あんなに強引に唇を奪ったのに、由は嫌がるどころから熱っぽく彼を見上げる。 そんな由を可愛く思い、 「ただでさえ、同じ家に住んでいるってだけでヤバいのに、ずっと由さん嬉しそうで・・・たまりません」 そう言いながら、目黒は由の腰に手を滑らせ背中の下から上へと撫で回す。 その度にビクッと反応する由。 彼の鎖骨に鼻をくっつけてスーッと匂いを嗅ぐ。 由も自分のシャツのボタンを外し前を開け、 目黒のTシャツをめくり上げ彼の締まった胸板に自分の露わになった肌を擦り付ける。 再びキスをしながら、 「片付け終わんないな」 「そうですね」 見つめ合って笑い合い、風呂に入りまた抱き合った。 「お前ら、酷いな・・・・」 呆れ顔で源は休憩室で目黒と由に説教した。 連休明けから通常の仕事になったが、 2人は連休中イチャイチャしまくり、同時に会議中居眠りしてしまったのだ。 『すみません』 しゅんとする由。 目黒も流石に下を向いていた。 源は腕を組んで、2人の前に仁王立ちする。 「浮かれるのは分かるが、仕事に支障はきたすなよ」 「はい」 「すみません」 落ち込む2人を見て、 以前の両思いになる前の2人を思い出す。 あれはあれで仕事に支障をきたしていた。 「まあ、幸せならいいけどな」 と、ぼそっと呟く源に由ははっと彼を見上げる。 2人が上手く言ってくれることをのぞんでいるのだから。 そんな優しい源に、 「源〜!お前って本当に優しいなぁ!」 と、抱きつく。 「はいはい」 と、由の頭をポンポンと叩く。 目黒も、 「俺もすみません。・・・気をつけます」 珍しく落ち込む目黒に、源は彼の額にデコピンをする。 「上手くやれよ」 「・・・はい」 優しい源に少しだけ心が震えた。 その後、2人は家に帰りルーティンを決めることになった。 「お互いのスケジュールを共有しましょう。それに支障が出ないように」 「そうだな」 家のソファに座りながら、話し合った。 目黒は少し押さえたトーンで、 「がっついてしまっていたかも知れません。・・・いつまでこうしていられるかって不安だったこともありました」 「目黒・・・」 「でも、もう不安にはなりません。だって」 そう言って目黒は由の顔を見つめ、 「由さんの目を見れば分かる。俺の事が大好きだって」 嬉しそうに目黒は由の額にキスをした。 「今度、俺の実家に行きませんか?」 「え・・・」 「家族に紹介したいんです」 「そ、それって・・・なんかプロポーズみたいだなぁ」 ははっと笑う由に、 目黒は由の左手の薬指にキスをしながら、 「そのつもりだけど」 「へっ!?」 由はボッと赤くなる。 目黒はまっすぐに彼を見つめ、 「言ったでしょ?一生離す気ないって」 「目黒・・・」 「翼、でしょ?」 「つ、翼」 照れながら彼の名前を呼ぶ由に、はにかんで笑う目黒。 そのまま由の額に頬に順番にキスをして、 「返事は?」 「・・・はい」 由は涙ぐみながら返事をして、目黒に抱きついた。 ずっと1人だと思っていた。 でも、 もう、恐れることはない。 翼がいれば。 終わり。

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