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神の悪戯
<side智己>
ニコラス先生の診察が終わると、クリスさんと寝室に二人っきりになった。
「トモキ、食事ができるまで少し眠ったほうがいい」
「クリスさん……ここに、いてくれますか?」
クリスさんはやさしさでそう言ってくれるんだろうけど、離れるくらいなら寝なくたっていい。
また一人になるのが怖いんだ。
クリスさんを見つめると、僕をギュッと抱きしめながら、
「心配しないでいい。さっきニコラスもトモキの近くにいるようにと言っていただろう? 大丈夫、トモキの世話は全て私がやる。起きている時も寝ている時もずっと一緒だ」
と言ってくれた。
起きている時も寝ている時もずっと……。
クリスさんの口からキッパリと言い切ってもらえるだけで安心する。
「ほら、心配しないで少し休もう」
「あの……クリスさんが、ここに戻ってからの話……聞きたいです」
「そうか、なら、寝物語として聴かせてやろう。トモキ、目を瞑って」
クリスさんの声を聞きながら眠れるなんてなんて贅沢なんだろう。
僕がそっと目を閉じると、唇に柔らかな感触がした。
「えっ?」
驚いて目を開けると、クリスさんの顔がすぐ近くにあった。
「あ、今……」
「おやすみの口づけだよ。ゆっくり眠れるおまじないだ」
「あの、おまじない……もう、一回……いいですか?」
「――っ、ああ。もちろんだよ」
クリスさんは僕のわがままにも笑顔で対応してくれた。
チュッと唇が重なるだけでクリスさんの温もりが伝わってくる。
ああ、本当にクリスさんに会えたんだって実感できるんだ。
クリスさんの腕の中に抱きしめられながら目を瞑ると、僕はあっという間に夢の世界に落ちていた。
<sideクリス>
ニコラスどころか、マイルズにもわかるほどの顔色の悪さ。
これも全て私がいなくなったせいだ。
食事ができるまでの少しの時間でも休ませてあげたい。
そう思って声をかけたが、トモキは私の身体に縋り付いて心配そうに見つめる。
トモキのトラウマはそう簡単には消えないようだ。
これは時間をかけてゆっくり落ち着かせるしかない。
私はトモキに決して離れないと約束をして寝かせることにした。
離れていた間の話が聞きたい、そう話すトモキに寝物語で聞かせようと思ったのはほんの少しの悪戯を思いついたからだ。
目を瞑らせて軽く口づけをしたら、可愛く照れるトモキが見られる。
そんな淡い期待を込めて口づけをすると、トモキからまさかのもう一回のおねだりが……。
ああ、私はなんて幸せなのだろう。
幸せに心を震わせながら、私はもう一度トモキの柔らかな唇に口づけを与えた。
トモキは安心したようにそのまま眠りについたが、きっと夢で聞いてくれているに違いない。
そう思って、私はここ数日の出来事を寝物語に聞かせた。
「トモキと離れて、気がついたら私は神殿にいたんだ。さっきまでいたはずのトモキの姿が見えず、代わりに見慣れた父の姿があった。その瞬間、トモキのいない世界に帰ってきたことを知って、私は半身がもがれたような苦しみを味わったよ。もうトモキに会えないかと思ったら、このまま死んでしまったほうがいいのかもしれないとさえ思った。それくらい、私にとってトモキのいない世界は生きている価値もない暗黒の世界にしか感じられなかったんだ。自暴自棄になりかけた私にかすかな光を与えてくれたのが、さっきいたジョバンニだよ。彼は昔の書物から、トモキがこちらの世界に来られるかもしれない方法を導き出してくれた。それでも万に一つの賭けだったけれど、その微かな可能性に賭けてでも私はトモキに会いたかった。会えたらもう決して手放さないと誓って……。勝手にこの世界に呼び寄せたことは申し訳ないと思うが、この世界でトモキを幸せにすると誓うよ。もう二度と泣かせたりしない……だから、トモキ……一生私の隣で笑っていてほしい」
私の腕に小さな頭を乗せているトモキからはスゥスゥと穏やかな寝息が聞こえている。
ほんの少し笑みを浮かべているように見えるその寝顔を私はもう決して曇らせたりしないよ。
もう一度、トモキの唇を奪うと、トモキは嬉しそうに
「ふふっ……くり、すさん……すきぃ……」
と満面の笑顔を見せてくれた。
その瞬間、この数日死んだように精気を失っていた愚息が一気に息を吹き返した。
いや、気持ちはわかる。
だが、まだまだこれからトモキが元気になるまで禁欲生活が始まるのだ。
もう少し萎えたままでいてくれたらよかったのに……。
そう思ってみても、こんなにも愛しいトモキを長い時間抱きしめていたら我慢できないのも無理はない。
愚息にしては頑張った方だと褒めてやりたいくらいだ。
だが、トモキを前に痛いほどビキビキに勃ち上がった愚息をどうしたら良いのだろう……。
そっとトモキから離れてトイレにでも行こうかと思ったが、トモキの腕が私にしっかりと絡み付いていて動けそうにない。
だが、このままでは辛すぎる。
深い眠りに入ったトモキはまだ起きそうにはないがどうするか……。
私は必死に考えた挙句、こっそりとベッドの中で処理することにした。
トモキの可愛い寝顔を見ていれば、きっとすぐに済ませられる。
それしかないと考えた私は、ベッドの中で静かにズボンと下着の前を寛げると、なんの障壁も無くなった愚息は途轍もない勢いで外に飛び出してきた。
私はそれを握り、トモキの可愛らしい顔を見ながら扱き始めた。
すると、突然トモキが
「うーん」
と可愛らしい声をあげながら私にさらに抱きついてくる。
驚いて愚息から手を離した瞬間、柔らかな感触を愚息に感じた。
何事かと恐る恐る布団を捲ってみると、
「――っ!!!!」
神の悪戯なのか、トモキが伸ばした手が愚息を握っていたのだ。
まさか、こんなことが起きようとは……。
悪いとは思いつつも、心地よい感触を捨てられない。
トモキに握ってもらったまま、腰をゆっくりと動かすととんでもない快感が全身を襲う。
「ああっ、なんて気持ちよさだ……」
思わず叫びそうになるのを必死に堪えながら腰を振り続け、私はそのまま蜜を吐き出した。
ここ数日分が全て出たのかと思うほど大量の蜜のせいで、ベッドの中にあの匂いが篭ってしまっている。
まずい! 急いで片付けないと!!
ベッド脇の棚に置いてあるタオルを必死に掴みそれで自分の蜜を拭き取ろうとすると、トモキはすでに愚息から手を離し、私の蜜で汚れた手を口元に持っていっていた。
起きているのかと思ったが、目は瞑ったままだ。
おそらく無意識なのだろう。
そういえば、あの時もトモキは甘くて美味しいと言って私の蜜を嬉しそうに舐めていた。
このおかげで私たちは再会できたんだ。
だからトモキにとって害になるものではないだろう。
ならば、これからのことも考えて早くトモキの蜜も私の中に取り込んだ方がいいな。
だが蜜が出るにはトモキに食事をさせて少しでも元気にさせなければな。
ああ、私も早くトモキの蜜を舐めたい。
その日までこっそりと処理する生活は続くだろう……。
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