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私の気持ち

※少し前のジョバンニの様子(気持ち)から始まります。 <sideジョバンニ> 「ジョバンニさま。マイルズにございます。ニコラス医師をお連れしました」 「――っ!!」 ベッドで眠る彼を見つめていると、扉をノックする音が聞こえて思わず声をあげてしまいそうになった。 この私がマイルズたちが部屋に近づいていることに気づかないとは……。 私は一体どうしてしまったのだろう……。 自分自身に驚きを感じながら、扉をあけマイルズとニコラス医師を中に入らせた。 「まだ意識が戻っていないのが気になるのですが……」 そういうと、ニコラスは彼の診察を始めた。 どうやら転移の際に床かどこかに頭をぶつけてしまったようで、それで脳震盪を起こしてしまっているらしい。 「特に傷等も見受けられませんし、反応もございますのでもうしばらくしたらお目覚めになるかと存じます」 「そうですか……良かった」 ふぅと安堵の息を漏らすと、ニコラスはにっこりと笑って、 「ジョバンニさまのそのような表情を拝見できるとは思いませんでしたね」 と言ってきた。 「そのような表情?」 「ふふっ。お気づきではないのですか? こちらのお方を心からご心配なさっておいででございましたよ」 「――っ、それは……トモキさまのお知り合いでいらっしゃるから……」 「それだけでございますか?」 そう言われて胸がドキドキする。 本当にトモキさまのお知り合いだから私はこんなにも気になって仕方がないんだろうか……。 自分で自分の気持ちがわからない。 「ニコラス……私は……」 「ジョバンニさま。クリスティアーノさまはこれからトモキさまのお世話にかかりっきりになられます。あのお方は病状が回復なさるまでに少し時間を要するでしょうから、マイルズ殿もトモキさまのお世話のお手伝いをなさるでしょう。ですので、このお方のお世話はジョバンニさまにお任せいたします。何かありましたらすぐに私をお呼びください」 ニコラスはにっこりと笑顔を向けながらも有無を言わさぬ様子で、私に彼のお世話をするように言ってきた。 それはもちろん構わないのだけど……。 でも、なんとなく彼への気持ちに戸惑ってしまう。 マイルズとニコラスが部屋から出ていくのを見送って、寝室へ戻ると彼はまだ眠っていた。 トモキさまと同じ世界からいらっしゃったとは思えないほど、逞しい身体をしている。 それに顔も天使のように愛らしいトモキさまと比べると、彼は彫りも深く、クリスティアーノ団長にも劣らぬほどの美形だ。 こんなにも違うものなのだなとつい魅入ってしまう。 彼はどうしてトモキさまと一緒にこの世界にやってきたのだろう。 あの時トモキさまは ――部屋が光った時……そばにいたから、かも…… そう仰っていた。 ということはかなり近しい人間だということだ。 それこそ、トモキさまのことを深く想っていらっしゃるのかも……。 団長とトモキさまが深く愛し合っていることはわかっている。 けれど、人の思いを止めることなどできないだろう。 もしかしたら、このお方は団長からトモキさまを奪うつもりでついてこられたのかもしれない。 そう思ったら、胸の奥がチクチクと痛んでくる。 ああ、そうか……。 やっとわかった。 私はこの彼が……好きなんだ。 しばらく経ってようやく目を覚ました彼と話をした。 必死に冷静を保ちながら、トモキさまとのことを尋ねてみると ――お慕い? ははっ。それはないですね。それに智己にはもうクリスさんがいますから…… そうキッパリと言い切ってくれた。 ホッとしたのも束の間、彼は私が団長を好いているのではないかと勘違いしたようで必死にそれを否定した。 そんな勘違いされてもらっては困る。 私のためにも、そして団長のためにも……。 団長が彼の名前を教えてくれていたが、どうしても直接聞きたくて名前を聞くとタツオミと教えてくれた。 「タツオミ、さん?」 聞き慣れない名前を決して間違えないように丁寧に発音すると、彼は蕩けるような笑顔を見せてくれた。 ああ、なんて顔をするんだろう……。 もうこの気持ちを抑えられる自信がない。 「あの……私、何かしてしまいましたか?」 私の表情を見て、タツオミさんは一気に不安げな表情を見せる。 早く誤解を解かなければいけないのだけど、なんと言えばいいのだろう……。 「あの、ジョバンニさん……?」 「いえ……っ、その、違うんです……っ」 「違う、とは……?」 「その……タツオミ、さんの……その……」 笑顔にドキドキしたなんて……そんなこと、今まで誰にも言ったこともないのに……言えるはずがない。 「わっ!」 続きを何も言えずに戸惑っていると、突然タツオミさんがサッと身体を起こし私の腕を引っ張った。 突然のことに驚きすぎて私はそのままタツオミさんの胸にポスっと抱き止められてしまった。 「ジョバンニさん……」 後ろから大きな身体で包み込まれるように抱きしめられながら耳元で囁かれる。 「私が何かしてしまったのなら教えてください。ジョバンニさんに嫌われたくないんです」 「ひゃっ」 その蕩けるような甘い声に思わず声が漏れてしまう。 今のは私の声? 自分でも信じられないような声にまた顔が赤くなっていくのがわかる。 「ジョバンニさん……もしかして、私のことを意識してくれていますか?」 うそっ、気づかれた! どうしよう……。 でも嘘はつけないし……。 結局何も言えずに小さく頷くことしかできなかった。 すると、突然私を包み込んでいた力が強くなった。 「えっ、あの……」 「ああ、ジョバンニさん……まさか、あなたも同じ気持ちでいてくれたなんて……」 「えっ……同じ気持ち?」 「はい。ジョバンニさん……私、あなたのことが好きです……初めてあなたを見た瞬間に一目惚れしたんです」 「――っ、そんな……っ。本当、ですか……?」 「私の目を見てください! あなたに嘘は吐きません」 そう言って私を見つめるタツオミさんの目はすごく真剣で一点の曇りもない。 彼のこの目を誰が嘘だと言えるだろう……。 「タツオミさん……私、嬉しいです」 「――っ、ジョバンニさん!」 気づけば、彼の唇が私のそれに重なっていた。 激しくも甘い口付け……。 ああ、もう私はタツオミさんと離れられそうにない。

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