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欲望と甘い蜜

「思っていたよりも随分広いお風呂ですね」 「はい。ここは公爵家の客間ですから、国王陛下がお泊まりになっても良いようにと豪華に作られているのですよ」 「えっ、ここはクリスさんのお屋敷ではないのですか?」 「? そうですよ。ここはバーンスタイン公爵家です。団長はこの公爵家の嫡男でいらっしゃいます」 「クリスさんが……公爵家、嫡男? あ、あの……騎士団の団長だと伺っていたのですが……」 「はい。その通りです。公爵家嫡男でありながら陛下直々に騎士団団長の任務を任されて兼務しておられるのです」 公爵家といえば、確か王家に次ぐ血筋をもつ貴族のはず。 そんな高位貴族の、しかも跡継ぎ? どうりで人を自然と従わせるような風格と気品があるはずだ。 「そんなに凄い人だったのですね、クリスさんは」 「ご存知なかったのですか?」 「ええ。騎士団の団長とだけは伺っておりましたが、まさか公爵家次期当主だとは……あっ、それなら跡継ぎの問題は大丈夫なのですか? 智己は子を産めないでしょう?」 「それなら心配には及びません。この公爵家は王家の血を受け継ぐものであれば後継となるのに問題はありませんから。現在王家には後継となる資格のあるものはたくさんいますよ」 「ああ、そうなんですね。よかった……」 「ふふっ。タツオミは御優しいですね。今、団長とトモキさまが無理やり別れさせられたらと心配なさったのでしょう?」 「ええ。だって、私たちがこんなにも幸せなのに出会わせてくれた二人が不幸になるなんて申し訳ないですからね。と言っても、私は絶対にジョバンニと離れたりはしませんけど」 「タツオミ……」 嬉しそうなジョバンニがあまりにも可愛くて、私はそのまま唇を奪った。 「ジョバンニ、いい……?」 「そんな……っ、聞かないで、ください……私は、いつだってタツオミのものです……」 「――っ、ジョバンニ!」 可愛いその言葉に一気に昂った私の欲望のせいで、豪華な広い風呂場にジョバンニの甘い声がしばらくの間響いていた。 <sideクリス> それから数日、私はトモキと少しの時間も離れることなく過ごした。 食事や風呂はもちろん、トイレでさえもトモキと離れることはなかった。 流石にトモキも最初こそトイレの介助を恥ずかしがっていたが、早く元気になるためには今は全ての世話を任せるべきだとニコラスが言ってくれたおかげで、納得してくれたのだ。 やはり、医師を目指していただけあって同じ医師の言うことは素直に聞いてくれるようだ。 私の胸に背中をもたれさせ、後ろから支えてやりながらトモキの果実のような可愛いモノに触れると、身体をびくりと震わせるのが可愛くて仕方がない。 ああ、早くこの果実を口に含み、あの甘い蜜をもう一度舐めたいものだ。 くっ――! そんなことを想像するだけで愚息が滾る。 このところ、毎日のようにトモキが寝てから処理をしているがそれでは追いつかぬほど昂りがおさまらない。 それもそうだろう。 常にトモキに触れ、煽られているのだから……。 だが、この我慢ももう少しの辛抱だ。 ニコラスからはトモキの状態も正常の範囲内に入ってきていると言われている。 これは驚くべき回復だそうだ。 ここにきた時の状態があまりにも悪かったからか、よほどここでの生活が合っているのが理由だろうかとニコラスは首を傾げていたが、私には思うところがある。 トモキが回復した理由……それはおそらく、私の蜜だろう。 毎晩私がトモキの手を借りてこっそりと処理するたびに、トモキはその匂いに誘われるように自分の手についた蜜を舐めとっていく。 最初こそ、心配して拭き取ろうとしたが、蜜を舐めた後の顔色が驚くほど良いことに気が付いてからはトモキの好きなように舐めさせることにしたのだ。 まだ本調子ではないトモキにそんなことをさせていたのかと思われるのが嫌で黙っているが、これが証明されれば、起きているトモキに舐めてもらうどころか、直接体内に取り入れることも喜ばれるかもしれない。 愚息よ、それまでの辛抱だ。 我慢してくれ。 そう必死に言い聞かせながら、私は今日もトモキの世話に励んだ。 「クリスティアーノさま。トモキさまのお身体を拝見するに、もうすっかり体調は戻られたかと存じます。トモキさまのお世話、大変お疲れ様でございました」 「いや、私は何もしていない。トモキが治ろうと努力しただけだ。トモキ、よかったな」 「はい。クリスさんのおかげです」 「くっ――!!」 嬉しそうなトモキの顔を見るだけで愚息が滾ってくる。 「クリスさん? どうかしたんですか?」 「いや、なんでもない。それでニコラス……大事なことを聞くが、交わりは問題ないか?」 「はっ? は、はい。体力的には問題ないかと存じますが、あくまでも常識の範囲内でお願い申し上げます。よろしいですか? クリスティアーノさまの化け……いえ、人並外れた体力とトモキさまの体力にはかなりの開きがございますので、トモキさまの体力に合わせて差し上げてください」 「そんなことわかっている。私は鬼畜ではないぞ」 「も、申し訳ございません」 体力が回復したとはいえ、こんなにも小さく華奢なトモキを私がそこまでするはずがないだろう! 私の理性がニコラスを叱りつけたが、本能は頭の片隅で笑っている気がする。 いや、私は決してトモキを傷つけたりはしない。 絶対にな。

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