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王国騎士団入団の日

<side新入団員・ルイージ> 今日は夢にまで見た王国騎士団入団の日。 クリスティアーノ団長と1対1での訓練していただける特別な日だ。 しかし、クリスティアーノ団長と1対1で訓練していただけるのは新入団員の中でも、入団試験でトップになった者だけと決められている。 何故かというと、クリスティアーノ団長の腕が凄過ぎて相手として話にならないからだ。 そのほかの者たちは数人まとめての訓練だったり、ジョバンニ副団長に訓練していただいたりということになる。 私はなんとしてでもクリスティアーノ団長に訓練をしていただけるよう、必死に訓練を重ね入団試験に臨んだ。 その努力が実ったのか、なんと1位で入団試験をクリアすることができたのだ。 しがない男爵の息子、しかも三男として生まれた私にはこれまで両親から特に期待もされずに生きてきたが、流石に入団試験を1位でパスした時は、この上なく喜んでくれた。 兄たちにもいつも邪魔者扱いされてきたけれど私は自分が強いことを知っていた。 だから、戦えば自分が勝つことがわかっていたから手を出さなかっただけ。 もし手を出して、兄に怪我でもさせれば騎士としての道が絶たれる。 だからずっと我慢してきたんだ。 騎士団に入ることが決まってからは、私を怖がっているように見えるからそれでいい。 私には騎士としての未来があるのだから。 訓練場で入団試験の成績順に並び、クリスティアーノ団長とジョバンニ副団長の到着を待つ。 その間もずっと、団長と副団長の話でもちきりだ。 団長の人気はもちろん、副団長はかなりの美人でそんなお方と訓練ができることに我々新入団員は皆、期待に胸を膨らませていた。 今日訓練場にいるのは新入団員だけ。 先輩の騎士たちとの訓練は明日からとなっている。 だからこそ、みんな少し気を抜いていたのかもしれない。 団長と副団長が訓練場に近づいているのにも関わらず、おしゃべりに夢中になってしまっていた。 ところが、突然訓練場の空気が変わったのを感じた。 その気配に先に気づいたのは私を含めた成績上位の者たち。 やはりこんなところで成績が表れるのかと驚いてしまう。 私たち上位者が一気に顔を強張らせ静かになったことに連鎖するように静かになり、しんと静寂が訪れた瞬間、訓練場に数人の足音が響いた。 んっ? これは、二人、いや三人か? 気配はもっと多い気もするが、不思議な感じだ……。 一体どういうことだろう? 気になって入口を注視していると、 「クリスティアーノ団長のご到着です」 という声が訓練場に響き渡った。 その声に、直立不動で整列して待っていると、 「――っ!!!」 団長が見たこともないような美しい人……というよりは可愛らしい人と言った方がしっくりくるかもしれない。 その人を抱きかかえたまま入ってきた。 騎士団には、団長から話してもいいと許可をいただけるまでは決してこちらから話してはいけないという決まりがある。 だから団長からお話がある前はどんなに気になっても声を出すわけにはいかない。 しかも、そのお方に視線を向けると団長から威圧たっぷりの視線を向けられる。 私たちはただただ恐怖に耐えながら、身体を震わせ団長のお顔を見つめるしかできなかった。 続いて、 「ジョバンニ副団長のご到着です」 という声が響き渡り、重苦しい雰囲気の中に少し安堵の空気が流れたが、 「――っ!!!」 今度はジョバンニ副団長が見たこともない騎士と寄り添いながら訓練場に入ってきて、私の頭の中はもうわけがわからなくなってしまった。 何故かといえば、ジョバンニ副団長と共に歩いている騎士、そのお方が着用されている騎士服の襟には副団長の証である金色の星が2つ付けられているからだ。 えっ?  どういうことだ? もしかしてジョバンニ副団長が降格? まさか……。 いや、そんなわけない。 だってジョバンニ副団長の騎士服にも副団長の証がきちんとついている。 ということは副団長が二人になったということか? いやいやそんな話、入団試験の日には何も聞いていない。 そもそもこのお方の姿すら見たことがないのに、騎士団に入団していきなり副団長だなんてありえない。 一体どういうことなんだろう……? 団長の腕に抱きかかえられている可愛らしいお方といい、副団長と寄り添っているこのお方といい、もうわけがわからない。 頭の中がぐるぐると回っていると、 「新入団員の諸君。入団おめでとう。ビスカリア王国騎士団団長のクリスティアーノだ」 と団長の挨拶が始まった。 その声にさらにピシッと襟をただす。 「君たちはビスカリア王国の平和と安全を守るために選ばれた精鋭だ。これからは王国騎士団の団員としての誇りを持って職務に臨んでもらいたい。良いな」 「はっ!」 新入団員全員の強い決意の声が重なって訓練場中に響き渡った。 「よし。そして、ここからが一番重要な話だが……」 その重々しさにゴクリと息を呑む。 「私の腕にいる彼・トモキは、我が国の救世主であり、私の大切な伴侶だ。国王陛下も、トモキがこの国で一番優先しなければいけない存在であり、守るべき存在だと断言しておられる。トモキがこのビスカリア王国で幸せに過ごすことがこの国の平穏を意味するのだ。トモキに無闇に近づいたり触れたりすることはこの私が許さん。良いな!」 「はっ!」 先ほどよりも皆の声が震えていたのはあまりにも多くの情報についていけなくなったからだろう。 まさか、王国騎士団に入れることになった日に救世主さまにお会いできるとは……。 とすると、副団長の隣にいるのは一体どこのどなたなのだろう……。

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