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第7話 ドキドキ♡温泉デート(3)★

「……だな。しばらく手繋いだまま歩くか」    そう答えると、すぐに手を握り返してくれた。互いの指と指が交互に絡み合う――いわゆる恋人繋ぎだ。  高山の手は大きくて温かく、触れているだけで心が満たされていくのを感じる。ただ、誰かと手を繋いで歩くだなんて幼少期以来なもので、妙にソワソワと落ち着かない。 「やっぱ恥ずかしいかも……」 「おいおい。小中学生じゃあるまいし、普段はもっとこれ以上のことしてるだろ」 「う、うるさいっ。それはそれ、これはこれなんだよ」  文句を言いつつも、砂浜に足跡を残しながら二人で歩いていく。  周囲の喧騒は遠く、聞こえてくるのは寄せては返す波の音だけ。時折吹いてくる潮風も爽やかで心地よく、ゆったりとした時間が流れるのだった。  やがてチェックインの時刻を迎え、二人は旅館へと足を運んだ。  到着すると、仲居の出迎えを受けたのち部屋に通される。旅館は和モダンといった佇まいで、予約していたのは広々とした畳張りの和室だった。  部屋に荷物を置いて一息ついたあとは、さっそく温泉に入りに行くことにする。ちょうど運よく貸切露天風呂が空いていたので、二人きりでゆったりと湯につかることができた。 「はー、気持ちいい」  侑人は手足を伸ばしながらしみじみと呟く。  貸切露天風呂は旅館の屋上にあり、そこから望む景色はまさに絶景だ。海が見渡せるロケーションに加え、天井は吹き抜けで解放感を感じる。 「ああ、いい湯だな。極楽極楽っと」 「高山さん、オヤジくさ……」 「お前だって似たようなもんだろうが」  軽口を叩きながらも、高山は侑人の体を抱き寄せてきた。正面からぴっとりと密着する形になり、濡れた互いの肌が触れ合う。 「ちょ、どこ触ってんだよ」 「貸切なんだし、構わねえだろ」 「そういう問題じゃ……っ」  抗議の声を上げるものの、高山は構わずに体をまさぐってくる。その手つきはいやらしくなっていくばかりで、腰のあたりを撫でられれば自然と吐息が漏れた。 (やばい、勃っちゃってる)  温泉に浸かって血行が良くなっているせいもあってか、すでに下腹部が熱を帯びている。恥ずかしい思いで高山の腕から逃れようとするも、逆に強く引き寄せられてしまった。 「あ、っ」  下肢に硬いものが当たる。それが何であるかなど、考えるまでもないだろう。  侑人が内股になってもじもじしていたら、不意に頬を撫でられて上を向かされた。額にちゅっと口づけが落とされて、首筋やうなじにも甘ったるく吸い付かれる。 「ん……っ、高山さん」  そうこうしているうちにも、今度は唇を塞がれた。  何度か柔らかく食んだあとに、緩やかな動作で舌が差し込まれ、口腔を蹂躙される。歯列にそって上顎を撫でられれば、背筋にぞくりとした快感が走った。 (これ以上されたらっ――)  このままではまずいと思い、高山の胸をやんわりと押し返す。 「や、まずいってこんなとこで……人に迷惑かかるしっ」 「わかってるよ。ただ、こうやって触っていたいだけだ」  と、高山は侑人の体を再び引き寄せてきた。  これ以上のことはしない、と言わんばかりの包み込むような抱擁っぷりに、侑人は目をぱちくりとさせる。 「本当に……手、出してこないんだ」  思わず漏れた言葉に自分でも驚く。  いつもは「やだ」と言ってもやめないくせに。もっといろいろしてくるのに――そんなことを考えてしまい、慌てて頭を振った。 「すまん。今、なんて?」 「べ、べつに大したことじゃないっ」 「なんだよ、気になるな。言いたいことがあるなら言えよ」  いまいち聞き取れなかったのか、高山が顔を覗き込んでくる。それでも侑人は頑なに拒んで、なんとか話を流そうとした。 (ああもうっ。なに考えてんだよ、俺は!)  どうも心のどこかでは期待していたらしく、内心で頭を抱える。  場所も場所だというのに、一人で勝手に盛り上がってしまった自分が恥ずかしくてたまらなかった。

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