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第9話 結婚式と、それから…(3)★

 挙式後はチャペルに併設されている会場でレセプションを開き、さらにはプランナーの案内でビーチや公園を巡って、ウェディングフォトを撮影した。  今日はとにかく朝から忙しい一日だった。遅い夕食をとったあと、ようやくホテルまで戻ってきて人心地つく。  さすがにもうクタクタだ。二人はタキシードから着替えることもなく、ソファーの背もたれに大きく寄りかかるようにして座った。 「さっすがに疲れたなあ」 「高山さん、重いっての……っ」  もたれかかってくる高山に対して苦言するも、侑人は心地のいい疲労感に浸る。挙式してからというもの、ずっと幸せな気持ちでいっぱいだった。 「本当によかったな、無事に終わって。――今までで最高の一日だった」  高山の言葉に侑人も頷く。 「うん、俺もそう思う。すっげえ幸せ……」 「だな」  高山は相槌を打ってこちらを覗き込んできた。視線が絡み合うなり、どちらからともなく唇を重ねる。 「……ん」  挙式中もこうしてキスを交わしたけれど、今しているのとはまったく別物だ。角度を変えながら何度も啄んで、甘くて濃厚なキスに酔いしれる。  次第に高山の手が胸元をまさぐり始め、体が熱くなってくるのを感じた。 「疲れてんじゃねーの?」侑人は唇を離して問いかける。 「初夜なんだから野暮なこと訊くなよ。それに、せっかくタキシードなんてもん着てるってのに、楽しまなきゃ勿体ねえだろ」 「あ、ちょっと……っ」  あっという間にベストのボタンを外される。  次いでサスペンダーを指先で弄びつつも、高山はそれ以上脱がせようとせず、手を滑らせて下腹部に触れてきた。やわやわと股間のあたりを揉まれて、侑人のものは容易く反応を見せてしまう。 「疲れてるときの顔ってなんかクるよな。ここも勃ちやすいし――ほら、もうこんなになってる」 「うるさ……い」  そんなことを言ったら高山だって同じだ。  疲れのせいかギラついた目をしているし、いつにも増して色気を漂わせている感じがする。そして、布地越しにもわかるほど張り詰めた欲望を見て、侑人はごくりと喉を鳴らした。 「……あんたも人のこと言えないくせに」  言って、こちらもお返しとばかりに股間へと手を伸ばす。柔らかく撫で上げれば、そこはすぐにも硬度を増して雄々しい存在を主張してきた。 「――……」  高山が微かに吐息を漏らす。  気をよくした侑人は、甘ったるく下唇に吸い付いてみせた。すると煽られたのか、高山の舌が荒々しく歯列を割ってくる。 「っ、ん……ふ」  高山はもう一方の手で後頭部を押さえつけ、より深くまで求めようとする。  それこそ、まるで貪るかのように。息継ぎもままならぬ口づけに翻弄され、侑人の口からは嚥下できなかった唾液が伝い落ちていく。 「……早くお前のナカに入りたくて仕方ねえ」  息継ぎの合間に囁かれた言葉は熱っぽく、情欲の色がありありと浮かんでいた。  ここまでされて、我慢することなどできやしない。侑人もまた、早く高山と繋がりたくて仕方がなかった。 「俺も、高山さんのが……ほしい」  だから、素直に懇願する。高山は「すっかりおねだり上手になったな」と破顔し、頬にキスしてくれた。 「待ってろ、必要なもん取ってくるから」  そう言ってソファーから立ち上がった高山を、侑人は物欲しげな目で見送る。  高まる期待にもじもじとして待っていたのだが、高山が戻ってくるなりフリーズした。ローションやコンドームの類はわかる。が、明らかに余計なものまで持ってきている。 「か、カメラ?」  それも手軽さが売りのミラーレスではなく、本格的な一眼レフカメラだ。  ハワイ滞在中、頻繁にカメラを構える姿を目にしていたものの、なぜ今それを持ち出してくるのか。疑問を口にする間もなく、高山はテキパキと三脚に取り付けていた。

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