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おまけSS クリスマスデート・リベンジ(1)
今年もクリスマスシーズンがやってきた。繁華街はイルミネーションで彩られ、そこかしこでクリスマスソングのメロディーが流れている。
年末になって常々感じるが、時が過ぎ去るのは早い。あれからもう一年が経つのか、と高山は思い返す。
去年のクリスマスは侑人が風邪をひいてしまい、残念ながらデートという雰囲気には至らなかった。その埋め合わせも兼ねてなのか、今年は相手の方から声をかけてくれたのだが――、
◇
「お待たせ。熱いから気をつけろよ」
ごった返す人混みのなか、高山は両手にグリューワインを持って、侑人のもとへ戻ってくる。
ベンチに腰掛けていた侑人は、手渡された紙コップを受け取るなり、律儀に言葉を返してきた。
「ありがと。いくらした?」
「これくらい奢りだ」
「いいの? じゃあ、ありがたくいただきます」
ふうふうと息を吹きかけたのち、侑人が湯気の立つグリューワインを口に含む。すると、「……あったまる」という呟きとともに、ほんのりと目尻が綻んだ。
「やっぱクリスマスマーケットときたら、これだよな」
高山も言って、隣へと腰掛ける。
クリスマスデートの定番ともいえる、横浜赤レンガ倉庫――。まさかあの侑人が、自らこのような場所へ誘ってくれるとは思ってもみなかった。
侑人はゲイセクシャルの自分に引け目を感じているらしく、あまりそういった雰囲気を周囲に見せたがらない。だから今年のクリスマスも、家でのんびりと過ごすつもりでいたというのに。
――高山さんさえよければ、一緒に行きたいところがあるんだけど。
そう切り出されたときは、思わず耳を疑ってしまった。
実際、来場客はカップルや家族連れがほとんどだし、男二人というのはやや目立つ気がする。勿論のこと、誘われた身としては嬉しいのだが、無理などしていないだろうか。
「………………」
高山は紙コップを傾けながら、思考を巡らせる。
そんなことをしていたら、ふいに侑人が距離を詰めて座りなおした。周囲の目が気になるだろうと、こちらが間隔を空けていたにも関わらず。
「なんか話してよ」
と、少し拗ねた顔をしながら見上げてくる侑人。
非日常的な空間というのも手伝ってか、どうやら要らぬ心配をしていたらしい。高山は安堵に笑みをこぼしつつ、ぽつりと呟いた。
「いいもんだな。こうして特別な誰かと、特別な夜を過ごすってのは」
「うっわ、出たよ。言ってて恥ずかしくねーの?」
「全然? 侑人も同じ気持ちだと嬉しいんだが」
いたずらっぽく言ってみせれば、相手は困った様子で視線を逸らす。
その反応からして答えは明白だ。つい意地悪したくなったが、機嫌を損ねられては元も子もないとすぐに思い直した。
「さてと。体も温まったところで、歩いて回るか」
ともにグリューワインを飲み終えると、あらためてクリスマスマーケットを見て回ることにする。
アーチ型のイルミネーションで彩られた通りには、スノードームといった雑貨類をはじめ、本場ドイツの伝統料理を提供する店が軒を連ねていた。特に飲食店の方はかなり混み合っている様子で、移動するのも一苦労だ。
まあ、これはこれでクリスマスデートの醍醐味だろう――と、人波に沿って二人並んで歩いていく。
すると、ふと高山のコートが引っ張られる感覚があった。見れば、侑人の手が控えめに裾を掴んでいるではないか。
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