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小ネタまとめ(1)
【同棲始めの新生活】
(あ……高山さん、寝ぐせついてる)
二人並んで朝食後の歯磨きをしていたところ、高山の後ろ髪がはねていることに気づく侑人。
何も言わず寝ぐせを直してやれば、高山がフッと笑うのがわかった。
「なんかいいもんだな」
そう前置きして言葉を続ける。
「こうして並んで歯磨きしたり、寝ぐせ直してもらったりとかさ。いかにも同棲してますー、って感じ」
「……なにしみじみ言ってんだか、恥ずかしい」
「はいはい。我ながら安い男だとは思うが、幸せを感じてるよ」
侑人は「うわあ」と返しながらも、はっきりと口にされては堪ったものではない。高山はいつだってこうだ。
(せっかく変に意識しないようにしてたのに。なんでわざわざ言うかな……)
ドキドキという胸の鼓動を感じつつ、侑人はそそくさと歯磨きを終えるのだった。
◇
【GW最終日】
「あーもう休み終わりとか……会社行きたくないー、働きたくないー!」
ゴールデンウィーク最終日の夜。
ベッドの上で駄々っ子のように声を上げれば、高山が隣で笑う気配がした。
「俺としては、侑人が専業主夫になってもいいんだぞ?」
「そ、それはなんかやだ」
平然と言ってのける高山に、何とも言えぬ気持ちになる。決して冗談ではないのが、この男の困ったところなのだ。
「よしよし、侑人は頑張りやさんだな。また次の休みが来たら、美味いもん食って遊びに出かけようなー?」
こちらの頭を撫でて、部屋の照明を静かに消す高山。
その胸元に寄り添いつつ、侑人は小さく呟いた。
「まだ寝たくない」
「じゃあ、眠くなるまで付き合うよ。なんか動画でも見るか?」
「……高山さん、さっきから子供寝かしつける親みたい」
「おっと、バレたか。お前のこと甘やかすのが楽しくてついな」
高山がいたずらっぽく笑い、侑人もつられて笑みを浮かべてしまう。
明日からまた会社勤めかと思うと憂鬱だったが、高山との他愛ない時間に安らぎを得るのだった。
◇
【くつろぎタイム】
性格上、なにかと侑人にちょっかいをかけてくる高山。
その日も一緒にバラエティー番組を見ていたのだが、ふとしたときに高山が頭を撫でてくる。
もしかしたら番組内容が退屈なのかもしれない。……が、あまりにしつこいので、気になって仕方がなかった。
「なんだよ、さっきから」
唇を尖らせて訊くと、きょとんとした表情が返ってくる。
高山はワンテンポ遅れで、「ああ」と自分の手に目をやり、
「わり、無意識だった」
にこーっと答える高山に、侑人がムッとしたのは言うまでもない。
◇
【旅行】
「お義兄さん、ご家族で夢の国行ったんですか? わざわざお土産だなんて悪い……」
「お前はついでに決まってんだろ、ついで! ――ほーら、侑人の好きなチョコクランチ! 懐かしいだろ!」
自宅にやってきたのは侑人の兄・恭介。
家族でテーマパークに行ったらしく、土産品をテーブルに広げていく。
「わ、これまだ売ってるんだ」
「ああ、昔よく食ってたよなあ。あの頃の侑人は、『帰りたくない~』って帰り際にめそめそしちまってさ……可愛かっ」
「兄さんやめて。いつの話してんだよ」
すると、恭介の言葉に興味津々といった顔をする高山。
侑人は複雑な表情で問いかける。
「……なに?」
「いや。俺との旅行もそんな感じなのかなあ、と思って」
「だから! 昔の話引っ張るなっての!!」
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