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小ネタまとめ(2)
【寝ぼけ】
週末。高山より先に目が覚めた侑人は、静かにベッドから抜け出した。
特に朝に弱いタイプではないのだが、昨晩遅くに帰宅した高山はまだ夢の中にいるらしい。
しばらく寝かせておくことにして、朝食の準備をしようと思い立つ。
(せっかくだから、ちょっと手の込んだもの作ってもいいかもな)
……と、キッチンに立ったところで、不意に背後から気配を感じた。気がついたときには、思いきり抱きしめられてしまう。
「ちょ、重っ……」
寝ぼけているのだろうか。キッチンに現れた高山は、そのまま首筋に顔を埋めてくる。
「起きたら、侑人がいなくなってた」
「いや、そんなこと言われても。――昨日遅かったんだろ? 休日なんだし、まだ寝てなよ」
「……侑人が淹れてくれたコーヒーが飲みたい」
幼げな雰囲気を漂わせる高山に、侑人はつい胸がキュンキュンとしてしまった。
こうして甘えられるのも悪い気がしなくて、相手の頭を軽く撫でてやる。
「わかったわかった。淹れてやるから」
言うと、高山が小さく笑みを浮かべたのがわかった。それから、ちゅっちゅと音を立てて首元にキスしてくる。
「こら、何してんだよ」
「こうしてるうちに、目が覚めるかと思って」
「ったくもう。くすぐったいから、やめてくださーい」
たしなめる言葉もどこか甘くなってしまい、我ながら苦笑してしまう。
結局、背後から抱きしめられたまま、朝食の準備をするのだった。
◇
【マッサージ】
「ああーもう、腰つらぁ……」
風呂から上がるなり、侑人はベッドに突っ伏してぐったりとした。
先に入浴を済ませていた高山が、いたずらっぽく笑う。
「侑人がオッサンみたいなこと言ってる」
「うるせー。今日は荷物の運搬が多くて、大変だったんだよ」
うつ伏せになったまま訴えると、高山が顔を覗き込んでくる気配がした。
「そいつはお疲れさん。労いにマッサージでもしてやろうか?」
「どうせエロいことしてくるんだろ」
「お前なあ。人のことなんだと思ってるんだ?」
「エロオヤジ」
こちらの即答に、高山は大袈裟にため息をついてみせる。
「ったく、今日はそういう気分じゃないんだろ? それくらい俺だってわきまえてるっての」
「本当に? なら、頼もっかな……」
言いつつ体勢を整えれば、高山が背後へと回った。
そして、腰のあたりを軽く触れてくるのだが、侑人の口からは小さく笑い声が漏れてしまう。
「なに笑ってんだ?」
「だって、高山さんに触られるのくすぐったくて」
「……まあいいけどよ。痛かったら、ちゃんと言えよ?」
高山が気を取り直すように言って、マッサージが始まる。あまりの心地よさに、侑人はすぐさま身を委ねた。
「っあ……ん、そこ……」
「ここか?」
高山が親指でぐっぐっとツボを押してくる。
その絶妙な指圧に、自然と甘ったるい声が出てしまう。
「んっ、ん、気持ちいいっ……高山さん、もっと」
「……もっと、なに?」
「それ、ぐりぐりってすんの、強く――もっとぐりぐりしてぇっ……」
「………………」
「あっ、いい……すご、きもち、いい……っ」
腰から背骨に沿って揉みほぐされていくうち、背中全体が温かくなって力が抜けていく。
うとうとしかけたところで、侑人は礼を言ってマッサージを終えることにした。
「ありがと、高山さん。なんかだいぶ楽になった感じする……高山さん?」
振り返れば高山が複雑そうな表情をしていて、つい侑人は首を傾げた。
「無自覚かよ」
「?」
高山が頭を掻いて、再び大きなため息をつく。
それから、流れるような動作でこちらの体を抱きしめてくるのだった。
「ちょ、なにっ」
「何もしないから、少しの間こうさせろ」
その声色は熱っぽく、どこか切羽詰まっているようにも聞こえて。
侑人は戸惑いながら、相手の背に腕を回すほかなかった。
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