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第1話
いつもと同じ朝練前の時間。
俺は、体育館の隅っこに座っていた。
影山や、日向はもう動いている。
「やっぱり、影山すごいな。俺にないもの全部もってる。…カッコいいな」
周りに誰もいないと思って呟いた言葉だったのに、後ろを振り返ったら、縁下が居た。
「あー、縁下…今の聞いてた?」
「聞いてましたけど、大丈夫ですよ。影山のこと、好きなんですよね?見てればわかりますよ」
「え!?そんなにバレてるの!マジかー。」
「…え。バレてないって思ってたんですか」
「…うん」
「バカ3人以外は多分わかってると思います」
「…結構バレてるんだな。」
「なんか、菅原さん、ボッーとしてるときは大抵影山を見てるんで…」
「え。そんなにも俺見てた?!」
(無自覚なんだ…)
そんな話で朝は縁下と盛り上がっていた。
「集合ー!!!!」
「菅原さん!トス、上げてくれませんか!?」
「おう、俺でよければいいよ!」
いつもと変わらない日常。
それが一瞬で崩れるときが不意にやってきた。
「か、影山くん!す、好きです!私でよければ付き合ってください!」
俺が、大地と旭を待たせていて少し急いでいた時に聞こえた声。
誰が告白されてんだろ…?
純粋に好奇心だけで覗くことにした。
そこに立っていたのはやはり俺の大好きな影山だった。
心がとても締め付けられた。
好奇心だけで見なきゃ良かったな…そう思った
俺は、その場を逃げるかのように学校を飛び出していた。
─ ─ ─ ─ ─
「スガ〜!坂ノ下商店寄ってかね?」
「…うん!寄ってくべ!」
今は一人でいるよりもみんなと一緒にいた方が気持ちも紛れると思った。
「それでな!そうしたらあいつが!」
「まじか!それはビックリするわな〜」
「そういや、最近寒くね?」
「わかる!靴下三重とかにするよな〜」
「「それは無い!お前だけだろ!」」
「ふ、二人同時に言われたらな…」
そんなくだらないことを話していると坂ノ下商店に着いた。
入ると、田中、西谷、縁下、木下、成田の二年生組が既にいた。
その後に、日向、月島、山口、そして影山の順で一年生達がやってきた。
俺は極力影山に会わないように、目を合わせないようにしていた。
「そういえば王様、今日告白されたデショ」
「???なんで知ってんだ?」
見るからにも頭がハテナでいっぱいの顔。
意外とコロコロと変わる表情が好きだな。と不意に思った。
それと同時に、月島にその話をここで振るな!と思った。
「なんでって、色々と聞かれたから」
「?何を聞かれたんだ?」
「…はぁー…今日と同じクラスの藤咲っていう奴が珍しく僕に話しかけてきてやたらと王様のことを聞いてきたんだよ…。ホンッット王様って鈍感だからいい加減にして欲しいよね」
「だから、あの時間まで居たのか…?」
「おうおう、聞いたぜ影山!お前何、女子にモテてんだ?あ゙あ゙?」
「そうだ!影山!お仕置きだ!身長縮め!」
「ちょっ?!何するんですか!?辞めてください!田中さん、西谷さん!」
やっぱり、バカはいつ見てもバカだな。
「告白されても断りますよ。俺、もう心に決めた人が居るんで。」
「な、なん…だと…?!影山にもう彼女がいただとぉおぉ?!」
その話を聞いたとき、心が苦しくなった。
あぁ…影山にも彼女というか好きな人、居たんだ。諦めなきゃいけないよな…
もう、その場に立っていられなくて、目には涙で視界がぼやけていた。
見られたくなくて、居たくなくて大地に「ちょっと急用思い出したから帰るな〜」と言ってその場から逃げた。
聞きたくなかった。
知りたくなかった。
こんな気持ち、知る前に忘れれば良かったのに…。
諦めなきゃ…いけないよな…。
そう思った瞬間、涙が出てきた。
影山の好きな人が俺ならばいいのに…。
そう思ってしまった。
「最低だな、俺って」
独り言の言葉は冬の夜空に消えていった。
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