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第12話-6

 だから仕事中は絶対に邪魔をしない。  恋人との時間は仕事が終わってからだと自分にルール付けをした。  相変わらず仕事が始まれば食事は適当になる隆則のスケジュールが書かれたカレンダーをこっそり確認しては、終わる頃を見計らって位に優しい食事を作り、それから徐々に精の付く食事へと変えて、少しづつ肉が付くようにした。  だが今回みたいに重くタイトな仕事が入ればまた一気に痩せ細ってしまうのがもどかしい。 「早く仕事終わらないかな」  ようやく名前呼びに慣れてベッドの中でも感じすぎると舌ったらずな声で『はると』と呼んでくれるようになった。それどころか何度も『キスして』と強請るようになったのだ。騎乗位にも慣れ自分から快楽を追うように腰を振るし、胸の粒で感じるようにもなった。次第に遥人の望むセックスをするようになった隆則が可愛くて愛おしくて、すぐにでも抱きたくてしょうがない。 「はー、でも今はこれだよな」  隆則のおかげで不自由なく資格試験の勉強に打ち込める環境のおかげで、過去問での正解率も合格範囲内に常に入っている。最後に残っている論文もクリアすれば在学中の資格獲得は確実になりつつある。  支えてくれている隆則のためにも絶対に今回で受かろう。  そして就職を有利にして今度は自分が隆則を支えるのだ。彼が今のような無理な仕事をしなくてもいいように稼げばもっと恋人としての時間が増えるだろう。そして自分がいなければ生きていけない人になるだろう。それこそが遥人の望むことだった。  正直、隆則になぜここまでのめり込んでいるのか遥人にもよくわかっていない。顔が特別綺麗なわけでも女性的でもない。身体は貧相だし会話が上手なわけでもない。共通の趣味もない。身体の相性はいいと思うが、遥人は隆則しか知らないので確証はない。  唯一言えるのは、守りたいという感情が家族以外に初めて向いた相手、ということだ。  いや、幼さのなくなった生意気な弟たちよりも年上の隆則の方が危うくてその気持ちが強い。 (あの人、本当に無茶するからな……俺がちゃんとしないと)  だから今はとにかく資格を取ることを優先しよう。  月末の試験に合格するべく、もう何回解いたかわからない、ゼミの教授から借りた試験問題集に集中した。
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