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第12話-5

 すべて自分の手で彼に快感を与えたい。  嫌がる隆則の敏感な蕾を舐め解し、指と唾液だけでトロトロに溶かしてから己の欲望を挿れては彼の感じる場所を突き続けた。出かける数時間前にもしていたせいか、隆則の中は大きな抵抗もなく遥人を受け入れすぐにでも達ってしまいそうなほどきつく締め付けてきた。  今年一番最初の快楽を自分が与えているのだという事実に、恍惚とした表情をさせているのは自分だという現実に陶酔した。  抜かないまま何度も体位を変え当然のように気を失うまで抱きつぶし、いつものように意識のないその身体を清めてから、裸のまま抱きしめながら眠った。  だが目覚めて隆則が発した一言は遥人を地獄の底にまで突き落とすものだった。 「ごめん、こんなにできない」  頭を下げながら眦に涙を浮かべて許しを乞う罪人のようだった。抱かれ過ぎてベッドから起き上がるのもままならない身体で「もうすぐ仕事を始めないといけないから」と言われて、辛いと同時に自制が効かなかった自分を反省した。  仕事に対してどこまでもストイックな年上の恋人は、こんな状況では気持ちが切り替えられないのだろう。 「俺の方こそすみません、やる過ぎました」  はしゃいだ、が正しい。この人を自分の思い通りの関係に引きずり込めたのが嬉しくてはしゃぎ過ぎたのだ。他の男に抱かれたいなんて思わないくらいセックスしたらずっと自分を見てくれる、自分の作るものを食べ続ければ他の物など口にできなくなる、そういう人に作り上げようとしている自分に気づいて、驚愕した。  今まで勉強と家のことばかりをし続けて、異性に興味を持つこともなければ付き合いたいとも思ったことはない。  言い寄ってくる人は何人もいたが、彼女らに咲くだけの時間がなかった。デートをしたりする時間があったら少しでも目標である仕事に就くための勉強をしたい。少しでも弟たちにいいものを作ってやりたい。  希望した大学に入り家を出て家族の面倒という仕事から解放されても、生活をするためにバイトをしなければならず、誰かのために割く時間などなかった。  ようやく落ち着いた生活ができるようになってどうしても欲しくなったのは、自分にこの生活を与えてくれている隆則だった。酷く頼りないくせに、頼られると断れない上に仕事面では完ぺきにこなそうとしては無理をする、酷くアンバランスで危うげなその存在を自分だけのものにしたかったし、自分のものになってからはそれを実感するように彼の『初めて』にのめり込んでいった自分に気づいた。

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